研究実績の概要 |
アブラムシの体色を変える共生細菌Rickettsiellaのゲノム解析に関しては1576143 bpの全塩基配列の決定に成功した。タンパク質コード遺伝子は1425, リボソームRNA遺伝子は6, 転移RNA遺伝子は42, GC含量は38.3%, coding contentは89%で、遺伝子組成はアブラムシの他の任意共生細菌よりも、系統的に近縁なLegionellaやCoxiellaに類似していた。Rickettsiella感染により増加するアブラムシ緑色色素の構造解析を進め、viridaphin A1 glucoside, viridaphin A2 glucoside, viridaphin B1 glucosideを同定した。共生細菌による体色変化にともなう宿主アブラムシの発現遺伝子解析については、人工感染法によって作出した遺伝的に同一でRickettsiella感染の有無が異なるアブラムシ系統を用い、次世代シーケンサーによるRNA-Seq法をおこなった。その結果、 Rickettsiella感染による体色の緑色化と連関して発現が顕著に上昇する脂肪酸合成系酵素遺伝子2種を同定した。その他のポリケチド合成系遺伝子群および脂肪酸合成系遺伝子群についても発現解析を進めている。アブラムシの体色変化と内分泌系の関係についても、幼若ホルモンの阻害剤等を用いた実験より新知見が得られている。またアブラムシ共生系で開発した色素分析技術の援用により、アカトンボの雄が性成熟に伴い黄色から赤色に体色を変化させる機構について、オモクローム色素の酸化還元によることを明らかにした。これは計画にない予定外の研究成果であったが、PNAS誌に発表され、新聞報道等で社会に広く紹介されるものとなった。
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