研究概要 |
本研究の目的は,全ゲノムの塩基配列の解析(パーソナルゲノム解析)に基づいて脳疾患の発症に関与するゲノム要因(genetic variants)を網羅的に明らかにし,脳疾患の病態機序の解明を実現することにある.effect sizeの大きいゲノム要因(variants)を見いだすためには,これまでのcommon disease-common variants仮説に立つアプローチは不十分であり,common disease-multiple rare variants仮説に立った,パーソナルゲノム解析研究を進める。これまでに,次世代シーケンサーを導入して,全ゲノム配列解析システムの整備を行った.さらに,次世代シーケンサーを用いた解析では重要となる,全ゲノム配列解析のshot readsから,variantsをcallするアルゴリズムについての詳細な検討を行い,精度の高いゲノムインフォマティクスのパイプラインを整備した.これらに基づき,多系統萎縮症多発家系,家族性筋萎縮性側索硬化症,家族性てんかんなどを含め,25例の全ゲノム配列解析を行った.1人の個人ゲノムでは,約300万個のsingle nucleotide variation(SNV)、が検出され,その中で,従来報告のない新規のSNVは,約500個検出されている.これらのSNVの中から,疾患関連のSNVを絞り込むために,多発家系などの家系例で,連鎖解析による候補領域の絞り込みを行うことにより,疾患に特異性の高いvariantsの絞り込みを行っている.これらのvariantsについて,疾患の病因変異であるかどうかについて,国際的な共同研究体制も構築し,大規模な症例の集積を行い,その検証を進めている.
|