計画研究
本研究の目的は,全ゲノムの塩基配列の解析(パーソナルゲノム解析)に基づいて脳疾患の発症に関与するゲノム要因 (genetic variants) を網羅的に明らかにし,脳疾患の病態機序の解明を実現することにある.平成24年度の研究では,わが国で発見された神経疾患である,近位筋優位型遺伝性運動感覚ニューロパチー(Hereditary motor and sensory neuropathy with proximal dominant involvement, HMSN-P)について病因遺伝子の探索を行った.HMSN-Pは,常染色体優性遺伝性であるので,標準的な連鎖解析を行い,決定された候補遺伝子領域(第3染色体長腕)について,次世代シーケンサーを用いたtarget resequencingを行い,領域内で見出されたsingle nucleotide variations を詳細に解析した結果,病因遺伝子がTFG (TRK-fused gene)であることを明らかにした.4家系で同一の変異が見出されたが,詳細なハプロタイプの解析から,2つの創始者ハプロタイプが観察され,independentに生じた変異であると考えられた.発症者の剖検組織の解析から,TFGの封入体が運動神経細胞の細胞質に観察されること,さらに,TDP-43の細胞質へのmislocalizationが観察され,運動ニューロンの変性過程に置いては,筋萎縮性側鎖抗硬化症の病態と共通するところがあることを解明した.
1: 当初の計画以上に進展している
ゲノム解析パイプラインが整備され,脳疾患の発症に関わる遺伝子の発見が想定以上に進展した.
次世代シーケンサーの解析パイプライン,インフォマティクスパイプラインが整備され,想定以上に解析が進んでいる.現在,疾患関連の候補遺伝子を多数見出しており,これらの遺伝子について発症機構の解明を進めていく.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
Am. J. Hum. Genet.
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http://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/press_archives/20120810.html
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20120803.pdf