本研究では、イルミナ社の次世代シークエンサー(HiSeq2000)を用いて日本人の標準配列を整備するとともに、脳・神経疾患由来の試料を中心に頻度は低いが疾患発症に関与する寄与度の高い多型を含む網羅的な多型情報(頻度情報)の収集を計画している。最終的には、パーソナルゲノム解析に必要な基盤技術および情報を構築するとともに、疾患の原因解明、個人に応じた治療や予防法の確立などの高度な診断を目指している。 そこで、今年度は高精度かつ高速な解析パイプラインを整備するとともに、鋳型調製時におけるバイアスや反応効率の改良などについて検討した。特に、構造多型の検出やアセンブリ時に必要不可欠であるメイトペアライブラリの調製法を重点的に検討し、そのためのベクターの作製などに着手している。また、日本人固有の多型情報の整備および疾患の原因解明を目指して、筋萎縮性側索硬化症およびレット症候群(計4検体)の全ゲノム配列決定(ペアエンドシークエンス)を実施した。これらの詳細な解析は、バイオインフォマティクスとも密接な連携をとりながら早急に進めていく予定である。なお、当初計画では、もっと多くの疾患由来の試料の全ゲノム配列決定およびエキソーム解析を実施する予定であったが、シークエンサーの納期、東日本大震災、倫理委員会での承認などの影響により予想以上の遅延が生じた。今後、これまでに得られた知見を本研究の日本人のパーソナルゲノム配列決定および多型検出に生かして日本人ゲノムの基盤情報の整備と疾患の原因解明にあたる。
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