計画研究
第二世代シーケンサーの登場により個人ゲノム医療を目指したパーソナルゲノム解析が可能となってきている。しかしながら、頻度は低いがリスクの高い変異を見出すためには、ヒトゲノム上に存在する多型を高感度,高精度に取得することが求められ、配列の精度や配列解析プロトコールの整備が重要な課題である。本研究では、第二世代シーケンサーを用いたゲノム解析技術を開発するとともに、その技術を用いて脳疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、統合失調症など)患者の全ゲノム配列を解読することにより疾患に関与する原因遺伝子の同定や発症機構の解明を目的としている。また、その過程で得られた構造多型を利用して日本人の多型頻度情報をデータベース化することも目指している。これまでに、HiSeq2000 (Illumina)を用いた配列決定システムを構築するとともにペアエンドシーケンス用のインサートサイズが均一でバイアスがかかりにくい鋳型調製法を開発した。また、遺伝子コピー数多型(CNVs)やゲノム構造多型などを検出するためのメイトペアライブラリ作製のプロトコールを確立したが、ショートリードのマップ結果からだけではサイズが大きな挿入やCNVsを同定することが非常に困難な場合が多く、第三世代のシーケンサー(PacBio RS)を用いた解析手法についても検討を開始している。情報解析については、ベースコールを含むデータ処理(ヒト標準配列との比較による多型の検出)を迅速に実行するために解析サーバーの増強および解析パイプラインを構築した。現在、再同意が得られた脳疾患由来の検体を中心に全ゲノム配列決定を進めており、網羅的な多型情報の収集を行っている。
3: やや遅れている
連携研究者により提供された検体については、すべて期間内に全ゲノム配列決定を実施したが、再同意や倫理審査などに時間がかかり、目標としていた検体数を確保することができなかった。今後、平成25年4月1日から施行される「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」により研究がさらに加速することを期待している。また、今年度末に機器や試薬のバージョンアップが行われており、これらに対応したサンプル調製を含むシーケンスシステムの構築が必要である。
今後、さらに多くの検体の全ゲノム配列決定を進めることにより、日本人ゲノムの多型データベースの構築および高精度な日本人ゲノムの標準配列を作成するとともに脳疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、統合失調症など)の原因遺伝子の同定や発症機構の解明を目指す。また、ショートリード(Illumina)を用いた構造多型解析では、サイズが大きな挿入や遺伝子コピー数多型(CNVs)の検出が非常に困難な場合があるため、第三世代のシーケンサー(PacBio RS)の使用も視野に入れて解析手法の検討を進める。
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