研究領域 | パーソナルゲノム情報に基づく脳疾患メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
22129004
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
桑野 良三 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20111734)
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研究分担者 |
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / パーソナルゲノム / 次世代シークエンサー / 遺伝子発現 / 脳組織 / 家族内発症 / エクソーム / 変異 |
研究実績の概要 |
これまでのアルツハイマー病の大規模GWAS (Genome-wide association study)では、強力なリスク遺伝子APOEに匹敵する遺伝子は見出されなかった。一つには比較的頻度の高いSNP(一塩基多型)を用いたためと考えられる。本研究では、家族内多発家系または同胞発症例のなかで、既知の原因遺伝子に変異のない家系についてパーソナルシークエンスをおこなって、稀な変異、挿入/欠失等の包括的ゲノム情報を徹底的に取得する。これらのビッグデータ解析に情報科学を駆使してアルツハイマー病の疾患関連領域を同定する。得られたリスク遺伝子を別途に解析するアルツハイマー病脳遺伝子発現プロファイルと比較し、免疫組織化学的手法で検証する。 パーソナルシークエンス:H24年度は、同一家族内に複数発症者と非発症者の3人3家系の9人について全ゲノムシークエンスを行った。3家系共通の遺伝子を同定したが、正常一般集団にも同じ変異が見られた。このことは,3家系共通の変異に絞るのではなく、家系ごとに原因遺伝子が存在して家系によってその遺伝子は異なるがアルツハイマー病発症パスウェイの上にある遺伝子と捉えることが正しいのではないか、との新しい考え方を提供したことに意義がある。また、同胞発症例を対象にエクソーム解析を一部の検体について行った。 発現解析:アルツハイマー病発症に関連する遺伝子の機能を解明するために、ヒト凍結脳からRNAを抽出し次世代シークエンサーを用いてRNAシークエンスを行った。エクソンアレイやreal time RT-PCR法による発現量解析と良く相関したので、配列情報を含めたmRNA発現解析およびマイクロRNAや非翻訳RNA解析に次世代シークエンサーが有効であることが解った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H22年度までに、次世代シークエンサーの前処理としてDNA断片化、回収率、エクソンキャプチャーの効率等の基礎条件検討が終了した。H23年度には、実際の検体を使ってシークエンスを行い、出力されるデータの品質チェック、既知の配列と比較を行い、シークエンスの精度を確認した。H24年度は、計画通り家族内症例に対象を絞って研究を進展させることができた。またヒト凍結脳から高品質のRNAを抽出し,次世代シークエンサーによるRNAシークエンスデータを取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度までの基礎的な検討が順調に進んだので、当初の計画通りに研究を推進する。研究精度をあげるために、できるだけ多くの家族内発症の被験者を発掘する。一般集団に無く個別家系に特徴的なrare variantsから原因遺伝子を同定する方法を確立する。次世代シークエンサーによって得られるビッグデータをインフォマティクス研究グループと共有して解析を加速し、日本人の参照配列を基に、アルツハイマー病固有のゲノム基盤を明らかにする。
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