研究領域 | パーソナルゲノム情報に基づく脳疾患メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
22129006
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
戸田 達史 神戸大学, 医学研究科, 教授 (30262025)
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研究分担者 |
小林 千浩 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (90324780)
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キーワード | パーソナルゲノム / パーキンソン病 / 認知機能 / 多型 / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
知能は多因子形質であり、遺伝要因と環境要因の影響を受けることが今日までの多数の研究の結果から明らかになっている。知能における兄弟間の一致率は一卵性双生児で0.86、二卵性双生児で0.60と一卵性が二卵性をかなり上回ることから、遺伝要因の重要性が表される。しかし、一部の一卵性双生児では兄弟間に顕著な知的レベルの不一致も認められる。この現象は、一卵性双生児間における知能関連遺伝子のエピジェネティックな相違で遺伝子発現レベルの差がもたらされることを示唆している。 本研究では知能に関するエピジェネティックな要因の同定を目指し、IQ差の顕著な一卵性双生児17組34検体の血液由来ゲノムを用いて網羅的DNAメチル化解析を行った。マイクロアレイにはAffymetrix Human Promoter 1.0R arrayを使用した。アレイのデータはMAT(Model-based Analysis of Tiling arrays)によって、兄弟間のメチル化状態に顕著な違いが見られる領域を候補メチル化領域として抽出した。より定量的なbisulfite genomic sequencingを用いて、あるGTPase活性化タンパク質をコードする候補領域のメチル化状態の相違が確認された。この遺伝子の発現レベルはIQの低い方の検体で高いことは定量RTPCRで分かった。 また、同じ検体のリンパ芽球由来のRNAを用いてAffymetrix Human Gene1.0ST arrayによる遺伝子発現プロファイリング解析を行った。GSEA(Gene Set Enrichment Analysis)によって兄弟間で有意に発現の変動が見られる遺伝子群を抽出した。結果、それぞれの双生児のIQが高い方のミトコンドリアのリボソームタンパク質とDNAヘリカーゼ関連遺伝子群の発現が上昇する傾向にあることが明らかになった。一方、leading edge analysisによって、幾つかのイオンチャネル関連遺伝子の発現がIQの低い方の検体で上昇することが示された。 今後はこれら候補遺伝子の機能解析により認知能力への関与を解明することを目指す。
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