研究概要 |
統合失調症45例、対照61例の末梢血で終末糖化産物(Advanced Glycation End-products ; AGEs)を計測し、患者の46.7%で有意なAGEs(pentosidine)の蓄積(カルボニルストレス)を認めた(χ2=28.69, df=1, P<0.0001, Odds比=25.81)(Arai et al. Arch Gen Psychiatry 2010、読売新聞6月8日)。カルボニル消去系分子であるesRAGE(Receptor for AGEs)を検討したところ、統合失調症で対照より有意な低下を認めた(χ2=16.33, df=1, P<0.0001, Odds比=6.33)(精神神経学会2010)。esRAGEの遺伝子AGERを解析したところ、c.244G>A(Gly82Ser), c.964G>A, c.992G>Aの3多型において、それぞれGA, AAはGGより有意にesRAGEの血中濃度が低かった(未発表)。これらから、統合失調症のカルボニルストレスには異種性がある可能性が示唆された。GLO1の変異やビタミンB6の寄与以外に、esRAGEの低下の関連が示唆され、その一部に遺伝的発現低下が寄与していることも考えられた。GLO1代謝系はグルタチオン代謝を介してホモシステイン、葉酸の代謝経路と相互関係が示唆される。そこで今年度はこれらの系も検討したところ、葉酸は患者で有意に低下し(P<0.001)、ホモシステインは患者で有意に上昇していた(P<0.001)(未発表)。興味深いことに、葉酸代謝の律速酵素MTHFRのVal222Met多型でValが有意に高ホモシステインおよび低葉酸と関連した(未発表)。これら代謝はビタミンB6濃度とも関連し、ホモシステインと葉酸が正常濃度の患者群に比べ、異常な患者では有意にビタミンB6の低下が認められた(P<0.001)。さらに、ホモシステインの濃度とpentosidineの濃度に有意な正の相関が認められた(ρ=0.823, P=0.003)。
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