計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
平成22年度は、次世代ヒト細胞異種移植システムを含む癌幹細胞解析のシステム構築を進めた。従来の異種移植に用いられてきたIL-2Rγnull-NOD/SCID(NOG)マウスの問題点は、繁殖力が弱くラインの維持が難しい点であった。我々は、C57/BL6バックグランドとすることで繁殖力の問題を解決し、かつNOGラインを越える異種免疫寛容の獲得を目的としたシステム開発を目指した。マクロファージ上に発現するSIRPAとそのリガンドであるCD47との結合は自己認識に重要な役割を担っているが、我々はNODライン特有の異種移植片寛容のメカニズムがSIRPA遺伝子多型にあることを突き止めた(Nat Immunol 8 ; 2007)。即ち、ヒトCD47とレシピエントマウスSIRPAの結合強化によりNODバックグラウンドを超える異種移植寛容の獲得が可能と考えられた。我々は、C57/BL6バックグランドでRag2およびIL2Rγを欠損したマウスに、NOD型SIRPA変異を導入した免疫不全マウスB6.Rag2nullIL2RγnullSIRPANOD/NOD(BRGS)ラインを樹立した。このBRGSマウスではT細胞のリークがなく、NOD型SIRPAを持つためにNOD/SCIDと比較して良好なヒト造血細胞生着が認められた。また、B6バックグラウンドであることの利点として、高い生存・繁殖力も確認された。このように、従来型より高効率の次世代異種移植プラットホーム開発に成功し、これを用いた癌幹細胞アッセイを開始した。現時点で、骨髄性およびリンパ性白血病の高い生着キメリズムが安定して得られることを確認している。このように、当初予定した平成22年度研究計画は遅滞なく達成された。
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