研究領域 | 癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築 |
研究課題/領域番号 |
22130002
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤司 浩一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80380385)
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研究分担者 |
千葉 滋 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60212049)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 白血病幹細胞 / 分子標的治療 / 免疫不全マウス / マクロファージ寛容 / SIRPA / CD47 |
研究実績の概要 |
(1) 免疫不全マウスの更なる改良による異種移植の効率化 平成22年度研究で樹立したB6.Rag2nullIL2RγnullSIRPANOD/NOD(BRGS)マウスは当初の予定通り順調に繁殖している。BRGSマウスをもちいた異種移植におけるヒト造血細胞の生着効率は、NOGマウスと同等以上の結果が得られ、今年度論文報告した(Blood 121, 840-848, 2013)。しかし、BRGSマウスを用いてもなお、顆粒球系細胞および赤血球の再構築は不十分であった。平成24度研究においては、特に顆粒球系細胞の効率的な再構築を目指した改良型BRGSマウスを作製した。顆粒球系細胞の増殖をサポートする重要なサイトカインであるIL-3は、ヒトとマウスで交差しないことが明らかとなっており、このことがBRGSを含む異種移植系における顆粒球再構築能の低下に繋がっている可能性があった。今年度新たに作製したヒトIL-3ノックインBRGSマウスでは、この点が克服されている。また、マウスc-Kitシグナルを抑制することにより、ヒト顆粒球再構築能を高めるアプローチにも成功した。今年度新たに作製したc-Kit mutant BRGSマウスでは、高いヒト顆粒球再構築を示すことを確認した。これらの改良型BRGSマウスをもちいることにより、骨髄増殖性腫瘍や骨髄異形成症候群(MDS)の異種移植マウスモデルを効率よく樹立することが可能になると期待される。
(2) MDS幹細胞に対する分子標的治療 AML幹細胞に高発現する細胞表面分子TIM-3は、正常造血幹細胞および病初期のMDS幹細胞には発現しないが、進行期MDS幹細胞に高発現することを見出した。抗TIM-3抗体投与によって、正常造血をスペアしつつMDSクローンを排除できる可能性について、上記の改良型BRGSマウスをもちいた異種移植系での検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度中間評価において、総合評価としてA評価(研究領域の設定目的に照らして期待どおりの進展が認められる)を頂いた。特に、本研究課題で開発した新規免疫不全BRGSマウスを領域全体で活用可能なリソースとして広め、領域全体の研究基盤の普遍化と効率化を計る取り組みには、高い評価を頂いた。平成24年度研究において、更に汎用性を高めた改良型BRGSマウス作製にも成功しており、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
慢性骨髄性白血病を含む骨髄増殖性腫瘍(MPN)や骨髄異形成症候群(MDS)の異種移植生着効率は、BRGSマウスを宿主としてもちいても必ずしも高くなかった。今年度新たに作製したヒトIL-3ノックインBRGSマウスやc-Kit mutant BRGSマウスでは、この点の改良がなされ、上記骨髄性疾患の異種移植生着効率に劇的な改善が期待できる。MPN幹細胞やMDS幹細胞の生体内動態解析と抗TIM-3抗体をもちいた分子標的治療に関する研究を加速させる成果であり、改良型BRGSマウスを用いた骨髄系腫瘍の幹細胞特性に関する解析を予定通り進める計画である。
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