研究領域 | 癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築 |
研究課題/領域番号 |
22130002
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤司 浩一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80380385)
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研究分担者 |
千葉 滋 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60212049)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 白血病幹細胞 / 分子標的治療 / 免疫不全マウス / マクロファージ寛容 / SIRPA / CD47 |
研究概要 |
平成25年度研究では、マウス体内でのヒト造血再構築の効率を高めることを目的に、次世代免疫不全マウスの更なる改良を目指した。ヒト造血細胞生着効率を高めるストラテジーとして、我々はCD47/Sirpa系を介したマクロファージ寛容に注目している(Nat Immunol 8, 2007)。Sirpaにはマウスストレイン固有の遺伝子多型が認められるが、NOD型のSirpaのみがヒト造血細胞上のCD47と強く結合し、マクロファージに対する貪食抑制シグナルを誘導可能であることを見出した。実際、C57BL/6.Rag2(nullIl2rgnull) マウスにNOD型Sirpaを遺伝子導入した新規免疫不全マウスC57BL/6.Rag2(nullIl2rgnull) mice harboring NOD-Sirpa (BRGS)では、NOD.Rag1(nullIl2rgnull) マウスと同等以上のヒト造血細胞生着が認められた。C57BL/6バックグラウンドとすることで、NODバックグラウンドには無い補体活性が担保されるため、造血器腫瘍に対する抗体療法のcomplement-dependent cytotoxicity(CDC)活性が評価可能となる点は大きなメリットであった。上述の研究成果は、Blood 121, 1316-25, 2013に報告した。 慢性骨髄性白血病(CML)や骨髄異形成症候群(MDS)において、病期進展により急性骨髄性白血病(AML)に移行することが知られているが、その分子メカニズムは明らかでない。AML幹細胞に特異的に発現するTIM-3は、慢性期CMLや病初期MDSの腫瘍性幹細胞では発現を認めないが、両疾患の病期進展に伴って発現が亢進することを見出した。TIM-3の機能に関してGalectin-9を介した細胞内シグナルを解析したところ、NF-kBシグナルの増強とb-cateninの核内移行を確認した。TIM-3の発現亢進が腫瘍性幹細胞の増殖および生存強化に関与している可能性があり、更なる検証実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したように、ヒト造血を高率に再構築しうる次世代免疫不全マウスラインの樹立に成功し、骨髄増殖性腫瘍や骨髄異形成症候群の腫瘍性幹細胞を解析する実験基盤が確立した。さらに、慢性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群の病期進展の過程で、Galectin-9/TIM-3を介したシグナルが関与する可能性を示す知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
次世代免疫不全マウス開発に関しては、ヒト赤血球や顆粒球系細胞の再構築能を高めるための更なる工夫を行う。また、慢性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群の病期進展を阻止する目的で、Galectin-9/TIM-3シグナルを遮断する技術の開発を目指す。
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