研究領域 | 癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築 |
研究課題/領域番号 |
22130003
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中山 敬一 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (80291508)
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研究分担者 |
西山 正章 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (50423562)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 細胞周期 / CDK阻害分子 / 静止期 / p57 / 白血病 |
研究概要 |
近年、少なくとも一部の癌において癌幹細胞が存在し、癌組織は癌幹細胞により維持されていることが明らかとなった。これまでの抗癌剤治療や放射線療法は増殖期にある癌細胞を標的としてきたが、癌幹細胞は増殖期を脱出して静止期に留まっているため、これらの従来の癌治療に耐性を示す。治療後に残存した癌幹細胞は再発や転移を引き起こすため、癌幹細胞の静止期維持機構の解明は癌の根絶に向けた新たな治療法の開発にとって重要である。しかし、その分子機構はこれまでほとんど明らかになっていなかった。 われわれは今回、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害分子p57が慢性骨髄性白血病(CML)における癌幹細胞(白血病幹細胞)の静止期維持に重要な役割を果たしていることを発見した。まず、CMLマウスモデルにおいてp57を欠損させると、細胞周期が再開し、静止期が維持されなくなることを見出した。次にわれわれは、p57欠損白血病幹細胞が抗癌剤に感受性を示すことを突き止め、さらにp57欠損と抗癌剤を併用することにより、白血病幹細胞を根絶させ、抗癌剤単独投与群と比較してCMLマウスの再発率を減少させ、生存率を著明に改善させることに成功した。最後に、この併用療法がCML患者由来の白血病幹細胞に対しても有効であることを確認し、p57がヒト白血病の治療において有望な標的であると結論づけた。これは先行して行っているFbxw7阻害実験と同じ結果である(Takeishi et al., Cancer Cell, 2013)。 今回われわれは、癌幹細胞の静止期を直接制御している分子を世界で初めて同定した。さらに本研究は、癌幹細胞を静止期から追い出すことにより、抗癌剤感受性を増大させるというp57標的療法が、癌治療において生存率を著明に改善できることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究計画書の通りの速度で研究は推移しており、既に一部の成果は公表している。
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今後の研究の推進方策 |
まずp57の阻害を低分子化合物や核酸医薬の使用によってヒトにおいて達成すべく、大規模スクリーニングのアッセイ系を確立することを目指す。同時に今後はp57のタンパク質発現量の調節機構を解明し、それを制御することによってp57の発現量を上昇させ、癌幹細胞を静止期にとどめておく「冬眠療法」の確立も視野に入れて研究を行う。
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