研究概要 |
癌幹細胞は腫瘍形成能をもつ細胞と定義され、その多くは細胞周期の静止期にあると考えられる。癌幹細胞は自律的に増殖するだけでなく、微小環境(癌幹細胞ニッチ)細胞および細胞から産生される分子の制御を受けている。今年度は、1)癌幹細胞のニッチ細胞の同定 2)ニッチの癌幹細胞に及ぼす作用(癌幹細胞細胞周期など)の研究を実施した。 造血幹細胞は骨髄低酸素性ニッチにあり、転写因子HIF-1により、未分化性および静止期性を維持していることを明らかにした(Cell Stem Cell,2012)。癌幹細胞でも正常幹細胞同様、解糖系代謝が優位であることが示唆されており、今後、正常幹細胞との異同の比較が興味深い。ユビキチンリガーゼFbwx7の変異により、T-ALL発症することが知られているが、本分子を過剰発現することにより幹細胞性が亢進することを明らかにした。本研究は班員の中山恵一博士(九大)との共同研究である(、Blood,2010)。c-myc蛋白の分解に関する本分子は、がん治療の新たな標的分子と考えられる。さらに、腫瘍細胞の増殖は血管新生に依存するが、本研究では、血管内皮細胞の前駆細胞がPO陽性の間葉系細胞であることを明らかにした。本研究は腫瘍血管の新生、伸張のメカニズを明らかにしたものとして注目される(J Exp Med,in press)。
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