研究領域 | 癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築 |
研究課題/領域番号 |
22130004
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
須田 年生 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60118453)
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研究分担者 |
永松 剛 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70453545)
田久保 圭誉 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50502788) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / ニッチ / 活性酸素 / CML / VE-カドヘリン / 低酸素 / IL-2Rα / 多発性骨髄腫 |
研究実績の概要 |
我々は、今まで造血幹細胞を中心に細胞周期の静止期性、代謝の特徴、幹細胞ニッチの低酸素性について研究を進めてきた。後半では癌幹細胞研究により集中し、慢性骨髄性白血病(CML)と骨髄腫の解析を進め、ニッチ療法の開発をめざしてきた。CMLは、造血幹細胞異常による骨髄増殖性疾患である。我々はマウス造血幹細胞にbcr/ablを導入し、それらをマウスに移植してCMLモデルを作成し、以下のように、腫瘍由来細胞がニッチとして作用していることを示した。1)CML幹細胞はKSL分画に存在し、その中でもCD25(IL-2Rα)陽性細胞が、Leukemia-initiating cellである。2)CD25(IL-2Rα)KSL陽性細胞はヒトCML患者にも認められる。3)CD25(IL-2Rα)KSL陽性細胞は、IL-6、IL-4などTH2サイトカインを多く発現していること、それらのサイトカインが血中で上昇している。4)CD25(IL-2Rα)KSL陽性細胞を抑制する抗体をマウスに投与したところ、CMLの進展を抑制しうる。同様にCD25欠失マウスにおいても、CML進展の抑制をみた。 多発性骨髄腫は、B細胞由来腫瘍細胞が主として骨髄内で増殖する悪性腫瘍である。GFP標識したヒト骨髄腫細胞を免疫不全マウスに静脈から投与し、その進展を解析し、以下の結果を得た。1)移植後初期には、骨髄腫細胞は、肝臓、脾臓ではなく、骨のしかもepiphyseal regionに検出される。骨芽細胞あるいは破骨細胞に近接して見られる。2)抗がん剤投与により腫瘍細胞は劇的に減少するが、一部のVE-カドヘリン陽性腫瘍細胞が残存する。(Iriuchishima et al, 2012)3)VE-カドヘリン陽性腫瘍細胞を再移植すると、再び骨髄腫発症を観察する。以上より、VE-カドヘリン陽性細胞をがん幹細胞と同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新学術領域内の共同研究として、幹細胞の静止期性の分子機構を解明することができた。CMLに関しても、共同研究として、マウスCMLモデルからヒトCML研究に移行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度のデータをベースに、CML,多発性骨髄腫について“ニッチ療法”の可能性を探る。
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