研究領域 | 癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築 |
研究課題/領域番号 |
22130005
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田中 真二 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (30253420)
|
研究分担者 |
森 正樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70190999)
|
キーワード | 消化器癌 / 癌幹細胞 / プロテアソーム / 合成致死 / 分子標的剤 / 細胞周期 / 可動性 / Rho-GAP |
研究概要 |
本計画研究では、癌幹細胞の「休眠」という機能に焦点を当てin vitro,in vivoにおける特徴を明らかにし、休眠型癌幹細胞およびニッチ特性を標的とした治療法開発を目指している。田申は、休眠機能の指標としてプロテアソーム活性低下を可視化するシステムを構築し、ヒト膵癌細胞に導入した。その結果、合成致死スクリーニング法により可視化癌幹細胞のみを攻撃する新規分子標的剤を同定し、マウス腫瘍モデルで治療効果を確認した。さらに、この可視化システムを導入したトランスジェニックマウスを作成して、生体内における幹細胞動態の解析を進めている。森は、細胞周期を2色の蛍光プローブ(G1期-赤、S/G2/M期-緑)でリアルタイムに可視化するFucci(Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)をヒト大腸癌細胞に導入した。皮下腫瘍を二光子顕微鏡によって観察した結果、G1期-赤(n=310)とS/G2/M期-緑(n=450)の可動性が異なること、後者が有意に速いことを見出した。Imaging guided Fucci microarrayによって、S/G2/M期で高発現しRho-GAPでドメインを有する分子celmobilinを抽出した。 celmobilinノックダウン株の皮下腫瘍は、細胞の可動速度が有意に低下した。大腸癌切除標本では、celmobilinが癌部で高発現し、癌深達度、無再発生存期間の低下と有意に相関した。本研究では、DNA合成期と細胞可動性を指標としてcelmobilinの同定と機能解析及び臨床病理学的検討を行ない、がん細胞の細胞可動性をターゲットとした次世代分子標的薬の開発・臨床応用へ発展させる基盤を構築した。来年度以降の細胞周期静止期の研究へと展開する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒト膵癌幹細胞のみを標的とする薬剤を同定し、前臨床試験で治療効果を確認した。また、消化器癌細胞の細胞周期静止期とともに、細胞周期回転期に特異的な発現遺伝子システムを同定した。細胞周期特異的に蛍光を発するFucciシステムにより、これら2つの細胞周期を個体レベルでも可視化して把握する事が出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
消化器癌の休眠機能の特性や細胞周期病態に応じた新たな分子機構は、新規の診断および治療のシーズとなる可能性を秘めており、開発研究を着実に推進する。
|