計画研究
本課題では、幹細胞のプロテアソーム非依存性(田中)と細胞周期特性(森・石井)の二つのアプローチに基づいて癌幹細胞を可視化し、生体内の動態解明と創薬展開を図るのが目的である。平成25年度研究実績として、田中は幹細胞可視化トランスジェニックマウス(Degronマウス)を作成し、膵特異的転写因子Pdx-1を用いた遺伝子改変マウスによる膵再生と前癌病変の解析を進めた。Pdx-1-Cre:LSL-KrasG12DとDegronマウスの掛け合わせによって作成したPdx-1-Cre:LSL-KrasG12D:Degronマウスでは、急性膵炎後の膵再生から膵癌前駆病変PanINが生じ、幹細胞特性が劇的に変化することを見出した。膵組織マイクロアレイ解析および蛋白解析によって新たな分子標的候補群を同定しており、平成26年度の研究課題として強力に推進している。また森・石井は、細胞周期静止期にある癌幹細胞を同定する目的で、癌の生体イメージングによる新規治療標的の探索を実施した。細胞周期を時期別に色分けして、細胞周期静止期とともにDNA合成期を峻別し、本年度はクラスター解析が比較的順調に進捗したDNA合成期と細胞可動性について検討したので、来年度以降の細胞周期静止期の研究に展開した。細胞周期を2色の蛍光プローブ(G1期-赤、S/G2/M期-緑)でリアルタイムに可視化するFucciをヒト大腸癌細胞株(HCT116)に遺伝子導入し、臨床的に重要な課題である難治性消化器癌の癌幹細胞における細胞周期静止期に分子機構を解明した。G0期の細胞の運命決定はそれより以前のG2M期又はS期のリン酸化シグナルに依存しておりインターフェロンを例としてその詳細を明らかにした。さらに代謝プロファイリングの結果G0期制御は酸化的リン酸化に際立った特徴があることを見出し平成26年に向けて継続的に研究事業を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
プロテアソーム非依存性を指標とした幹細胞性可視化システムを構築した上で、トランスジェニックマウス作成に成功し、応用範囲が拡がっている。さらに、細胞周期の峻別による分子機構の解明からその背景となる代謝リプログラミングにまで、事業が展開しており当初の計画以上の進展を得ている。
平成25年度研究実績により、プロテアソーム非依存性膵癌前駆病変PanINにおける組織幹細胞の特異性を見出し、新たな分子標的候補群を同定した。同定した分子標的候補群をin vitro, in vivoで分子生物学的に解析し、Deg; Pdx-1-Cre; LSL-KrasG12Dマウスにおける膵発発生予防およびDeg; Pdx-1-Cre; LSL-KrasG12D;LSL-Tp53R172Hマウスの浸潤性膵癌および転移性膵癌に対する治療効果を検証する。この前臨床試験の結果に基づき、膵発癌および再発の化学予防、進行性膵癌に対する分子標的治療への臨床展開を図る。さらに、難治性消化器癌の克服に向けて治療抵抗性クローンの解明を進め生理的活性物質の網羅的動態把握を推進する。5年~10年以内に画期的な創薬新技術を開発する。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 4件)
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