研究領域 | 癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築 |
研究課題/領域番号 |
22130007
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐谷 秀行 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80264282)
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キーワード | 細胞 / 癌 / 分化 / 増殖 / 抗癌剤 / 代謝 |
研究概要 |
申請者は、マウスの正常細胞に特定の遺伝子操作を加えることにより、自己複製能と多分化能を有した上で癌を形成することのできる細胞を樹立することに成功し、それらを同系マウスに少数移植することにより、ヒトの腫瘍に生物学的および組織学的に酷似した悪性腫瘍を100%誘導するシステムを保有している。この人工癌幹細胞(induced cancer stem cells:iCSC)技術を基盤にし、癌幹細胞の体内での挙動の解析、癌幹細胞と非癌幹細胞との相互作用の解析を行い、それらを制御・構成する分子の同定と阻害化合物の探索を行い、最終的に癌幹細胞の治療抵抗性を克服する戦略をデザインすることを目的として研究を行った。本年度は、骨肉腫iCSCを用いてin vivoにおける腫瘍形成の際に腫瘍の部位によって未分化な自己複製能を持つ細胞と、分化して骨や軟骨になる細胞がどのような微小環境の変化に基づくものかについて解析を行い、腫瘍周辺の線維芽細胞から分泌されるFGF2が重要な役割を果たしていることを見出した。また上皮性癌の癌幹細胞マーカーとして知られているCD44の機能解析を行い、そのスプライスバリアントフォーム(CD44v)がシスチントランスポーターxCTの発現を安定化することで還元型グルタチオン(GSH)の生成を促進させるという昨年の所見に加えて、CD44が細胞内ドメインでM2型ピルビン酸キナーゼと結合し、その活性を抑えることで、ワーブルグ効果に貢献し、さらにGSHの産生を促進していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
癌幹細胞の治療抵抗性が酸化ストレスを抑制する能力であることを見出し、その機構解析を目標として進めてきたが、代謝経路に違いがあることを見出すことができて、当初の計画より早く標的となる分子の同定を進めることができている。また転移、再発と癌幹細胞との関係についても新たな所見がすでに得られており、モデル動物を用いた前臨床試験が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
癌幹細胞の治療抵抗性のメカニズムについて計画通りに進めていく。また具体的に放射線治療や化学療法などに対する癌幹細胞の耐性が、同じ機構で制御されているのか否かについても解析を進め、標的を明確にして概念の証明を行い、実臨床に情報を提供できるように研究を進める予定である。
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