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2012 年度 実績報告書

人工癌幹細胞を用いた治療抵抗性克服戦略の開発

計画研究

研究領域癌幹細胞を標的とする腫瘍根絶技術の新構築
研究課題/領域番号 22130007
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

佐谷 秀行  慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80264282)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2015-03-31
キーワード細胞 / 癌 / 分化 / 増殖 / 抗癌剤
研究実績の概要

<人工がん幹細胞(iCSC)を用いた腫瘍形成能を決定づける分子の同定>
骨肉腫iCSCを用いて、生体における腫瘍形成を機能的に制御する分子としてIGF2BP3/Imp3(以下Imp3と呼ぶ)を見出した。Imp3はiCSCが生体において腫瘍を形成する過程においてその発現が上昇し、発現を抑制することによって完全にマウスにおける腫瘍化を防ぐことができることが分かった。またImp3はRNA結合たんぱく質であり、その標的となる複数のmRNAを制御することで腫瘍形成能の制御をおこなうことが示唆された。
<CD44vによる癌幹細胞の治療抵抗性制御メカニズム>
以前私たちはCD44のバリアントアイソフォーム(CD44v)が、細胞膜においてシスチンのトランスポーターであるxCTと結合し、グルタチオンの生成を促進することでがん細胞の活性酸素種の蓄積を抑制し酸化ストレスへの抵抗性を高めていることを見出した。転移性マウス乳がんモデルを用いて解析を行ったところ、CD44vを発現する細胞は原発巣から有意に肺に転移する能力を持ち、それがグルタチオン合成能に依存することが分かった。つまり、CD44-xCTを介したレドックス制御が、癌幹細胞の治療抵抗性や転移機構に重要であることが明らかになった。
<iCSCを用いた放射線抵抗性増強メカニズムの解析>
グリオブラストーマのiCSCを用いて、反復放射線照射によって増強する治療抵抗性因子の同定を試み、IGF1シグナル伝達経路の活性化が関与することを見出した。そしてIGF1経路の阻害によって放射線治療効果が増強することが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで各種臓器におけるiCSCの作製を行ってきたが、それらを用いてがん幹細胞の治療抵抗性や転移や再発における分子背景を明らかにする研究が本格的に始動したと考える。また、それらの分子を抑制することで、これらがん幹細胞の特性を抑制することができることも確認できた。扁平上皮がんではCD44vを発現している細胞ががん幹細胞を含有する分画であり、インボルクリンを発現するがん細胞が非がん幹細胞であることが明確になり、がん幹細胞の治療における動態をモニターできるシステムが出来上がった。治療の標的となる分子の同定、またそれらの分子の阻害剤をスクリーニングするためのアッセイ系が既に樹立できており、プロジェクトはおおむね順調に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

<iCSCを用いた癌幹細胞機能の解析>
癌幹細胞の高腫瘍形成能を規定する分子としてImp3及びCD44vを見出したので、その分子の生物学的意義(再発、転移における役割)並びに治療標的としての意義についてiCSCを用いて明らかにする。更にそれら特異的分子の遺伝子プロモーター下にEGFP等の蛍光物質をレポーターとして発現する遺伝子改変マウスを作製し、生体内での癌幹細胞の挙動を追跡する。更にImp3及びCD44vの機能を抑制する化合物をスクリーニングする。
<癌幹細胞と非癌幹細胞の相互作用の解析>
癌幹細胞と非癌幹細胞を種々の条件で混合し、癌組織の生存・進展のために必要な癌組織内環境を分子レベルで明らかにする。癌幹細胞と非癌幹細胞をマーカーあるいは機能によって分離し、それらを混合することでin vitro及びin vivoにおける性質の変化を解析する。非癌幹細胞の存在によって発現変化を受ける癌幹細胞側の遺伝子、タンパク質、代謝産物、逆に癌幹細胞の存在によって発現変化を受ける非癌幹細胞側の遺伝子、タンパク質、代謝産物の解析を行うことで、それぞれの細胞の相互作用について明らかにする。
<癌幹細胞から非癌幹細胞へのシフト誘導化合物の同定>
これまでに、分化誘導に関与する転写因子の発現が癌幹細胞を非癌幹細胞に変化させることを見出しているので、その転写因子の活性をコントロールできる化合物の探索を行う。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Complexity of cancer stem cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Sugihara E
    • 雑誌名

      Int J Cancer

      巻: 132 ページ: 1249-1259

    • DOI

      10.1002/ijc.27961

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ink4a/Arf-/- and HRAS(G12V) transform mouse mammary cells into triple-negative breast cancer containing tumorigenic CD49f- quiescent cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Kai K
    • 雑誌名

      Oncogene

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1038/onc.2012.609

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Redox regulation in stem-like cancer cells by CD44 variant isoforms.2013

    • 著者名/発表者名
      Nagano O
    • 雑誌名

      Oncogene

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1038/onc.2012.638

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Establishment of HRASG12V transgenic medaka as a stable tumor model for in vivo screening of anticancer drugs.2013

    • 著者名/発表者名
      Matsuzaki Y
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 8 ページ: e54424

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0054424

    • 査読あり
  • [雑誌論文] xCT inhibition depletes CD44v-expressing tumor cells that are resistant to EGFR-targeted therapy in head and neck squamous cell carcinoma.2013

    • 著者名/発表者名
      Yoshikawa M
    • 雑誌名

      Cancer Res

      巻: 73 ページ: 1855-1866

    • DOI

      10.1158/0008-5472.CAN-12-3609-T

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Twist2 functions as a tumor suppressor in murine osteosarcoma cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa T
    • 雑誌名

      Cancer Sci

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Alternative splicing of CD44 mRNA by ESRP1 enhances lung colonization of metastatic cancer cell.2012

    • 著者名/発表者名
      Yae T
    • 雑誌名

      Nat Commun

      巻: 3 ページ: 883

    • DOI

      10.1038/ncomms1892

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Up-regulation of Imp3 confers in vivo tumorigenicity on murine osteosarcoma cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Ueki A
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 7 ページ: e50621

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0050621

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Reactive oxygen species-induced autophagic degradation of Helicobacter pylori CagA is specifically suppressed in cancer stem-like cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Tsugawa H
    • 雑誌名

      Cell Host Microbe

      巻: 12 ページ: 764-777

    • DOI

      org/10.1016/j.chom.2012.10.014

    • 査読あり
  • [学会発表] Novel strategies for targeting cancer stem cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Saya H
    • 学会等名
      Ninth AACR-Japanes Cancer Association Joint Conference
    • 発表場所
      Hawaii,米国
    • 年月日
      2013-02-24 – 2013-02-24
    • 招待講演
  • [学会発表] A novel therapeutic approach targeting the CD44 variant functions.2012

    • 著者名/発表者名
      Saya H
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2012-09-19 – 2012-09-19
  • [備考] 慶應義塾大学 医学部 先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門

    • URL

      http://www.genereg.jp/

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公開日: 2018-02-02  

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