研究実績の概要 |
HRG-HER-NFkBシグネチャーならびにHRG-HER-PI3Kシグネチャーから、得られた候補分子、IGF2, AR, GDF15, MICAL3などについて、乳癌臨床検体のスフェア培養の系を用いて、癌幹細胞維持に重要な役割を果たしていることがわかった。分子機構を詳細に解析した結果、IGF2-ID1-IGF2サーキットの形成が、乳癌幹細胞の幹細胞性の維持に重要であることがわかった。 ARは、EGFRのリガンドである。そこで、EGFRの代表的なリガンドであるEGFとスフィア形成能を比較した。その結果、ARのほうに、EGFよりも強いスフィア形成能が認められた。その分子機構を詳細に調べたところ、リガンド刺激に伴うEGFRの蛋白レベルのダウンレギュレーションが、EGF刺激ではおこるが、AR刺激ではほとんどおこらないことがわかった。蛋白質のダウンレギュレーションに重要な役割を果たすE3ユビキチンリガーゼCblが、EGF刺激によってEGFRとの結合が促進される一方、AR刺激によってはEGFRとの結合が促進されないことがわかった。CblとEGFRとの結合の違いによって、ARとEGFのスフィア形成能に違いが生じることが示唆された。 FRS2betaは、正常乳腺ではluminal細胞の前駆細胞に発現する一方、がん組織では癌幹細胞に発現していることがわかった。FRS2betaが発現している細胞は、ERKの活性が比較的低く、そのために細胞の未分化性が保たれていることがわかった。その際に、ID3, Hes1の発現が上昇することがわかった。 当概領域メンバーとの共同研究を進め、鍵分子抽出を行う。
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