計画研究
真核細胞のゲノムDNAはヌクレオソーム構造をとる。ヌクレオソームは、ヒストン八量体に 146塩基対のDNAが巻きついたものである。ヌクレオソームは様々な DNA介在反応を負に制御しているため、それぞれの DNA介在反応の進行には適切なヌクレオソームの構造変換が必要とされる。これまでに、出芽酵母ヒストン点変異株ライブラリー (histone-‘GLibrary’と呼ぶ)を用い、様々なDNA介在反応の制御に異常を示すヒストン変異株を同定してきた。その結果、転写開始、転写伸長、DNA複製、DNA修復、染色体分配に関連するのべ 287個のヒストン残基を同定した (Sakamoto et al. Genes Cells 14, 1271-1330, 2009; Kawashima et al. EMBO J. 30, 3353-3367, 2011)。さらに平成 23年度中に、染色体分配に関わるヒストン残基が Sgo1(染色体分配に関与する既知因子)と相互作用することを示唆(Kawashima et al. EMBO J. 30, 3353-3367, 2011)するとともに、RNA polymerase IIやそれに相互作用するヒストンメチル化酵素 Set2が相互作用するヒストン残基も同定した(Endo et al. Genes Cells 17, 65-81, 2012)。
2: おおむね順調に進展している
染色体分配および転写伸長の反応に関わるヌクレオソームの領域の特定とそこに作用する因子の同定に成功した。
本年度の実績の部分で述べた以外に、平成22~23年度を通じてコアヒストンを解析する新手法 “Functional analysis of linker-mediated complex (FALC) strategy” の開発をてがけ、平成23年度末にその開発にほぼ成功している。FALC法をコアヒストンに適用した結果、ヒストン H2Aと H2Bの機能を保持した状態で一分子(連結H2A-H2B)として連結することに成功し、さらに機能的な連結 Htz1(H2Aのバリアント)-H2Bも作製できた。次年度は、histone-GLibtary解析で既に得ているヒストンのアミノ酸残基の情報(特に H2Bについて)を、これらの連結ヒストンを用いて解析する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件)
EMBO J.
巻: 30 ページ: 3353-3367
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