研究概要 |
ヒストンバリアントは、通常のコアヒストンと置換してヌクレオソームを形成し、バリアント特異的なDNA介在反応を制御する。通常のヒストンH2AとそのバリアントH2A.Zについて、それぞれ酵母において網羅的な点変異体スクリーニングが行われ、「Htz1(酵母H2A.Z) 存在下での H2A点変異」、あるいは「野生型 H2A存在下での Htz1 点変異」の細胞に与える影響が報告された。本研究では、H2A と Htz1 のアミノ酸残基レベルでの連携を解明するため、H2A点変異とHtz1点変異を同時にもつ細胞の解析を目指した。 両者の点変異同士の組み合わせは1万を超える。解析対象のアミノ酸数を限定するため、「H2A点変異の増殖能に与える影響」をHtz1非存在下で調べ、その条件で増殖に必須なH2A残基9つを同定した。この9つは H2Aと Htz1でそれぞれ同一であり、これらを解析対象とし、H2A/Htz1二重点変異株81 (9 X 9)を作製した。8つのアミノ酸については、H2Aと Htz1の同じ位置への変異導入により、増殖能が低下し、特に H2A-E93A/Htz1-E100Aは致死となった。これらは、H2Aと Htz1の同じ位置のアミノ酸の機能が細胞の増殖に重要であることを示唆する。興味深いことに、H2A- E93Aは Htz1-E100A以外に、Htz1-E64A, -L73A, -E72Aと組み合わせても増殖能が低下する。Htz1-E64, -L73, -E74, -E100は酸性のアミノ酸が集積するacidic patch領域に属する。これは、「H2Aのacidic patch内の E93」の増殖における機能は、「Htz1の acidic patch 内の 4残基により形成される表面」の機能で補完されることを示唆する。
|