研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
22131003
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青田 聖恵 (浦 聖恵) 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (80289363)
|
キーワード | ヒストンH3 / クロマチン / DNA損傷応答 / トポイソメラーゼI / リンパ細胞 / B細胞 / 4-p症候群 |
研究概要 |
ゲノムの進行中の転写領域をマークするピストンH3,36番目のリシン残基のメチル化酵素Whsc1は転写調節因子、核構造体に加えてDNA損傷因子と複合体を形成する事から、転写とDNA損傷応答をリンクさせた新規のゲノム機能維持機構につながる可能性が高い。本研究ではヒストンH3K36化酵素が転写反応過程におけるDNAストレス応答に働き、個体発生・分化過程で過度の細胞死を防いでいるとの独自の転写-DNA損傷応答モデルの検証を目指す。 Whsc1が主要な原因遺伝子である4p-症候群の顕著な異常は成長阻害である。Whsc1欠損マウスの成長阻害を組織別に比較したところ、ほとんどの組織が体重差を反映しているのに対して、胸腺と脾臓が極端に小さいことを見出した。実際に、胸腺細胞および脾臓細胞数が野性型に比べて著しく減少しており、アネキシンVの抗体を用いたFACS解析から、Whsc1欠損リンパ細胞でアポトーシスを起こした細胞が多い事を、胎仔でも出生後でも確認した。胸腺細胞ではT細胞の減少に加えて、細胞分化異常が示唆された。そこでさらに、欠損マウスは出生後致死である事から造血細胞分化を欠損マウスのE14.5胎仔、肝臓の細胞を成体に骨髄移植して解析を行った。その結果、造血幹細胞数には大きな数の変動は見られないが、各種造血細胞への分化の早い段階で細胞数が減少し、特にB細胞・T細胞が激減することがFACS解析により確認された。リンパ球はDNAストレスに鋭敏な細胞であり、今後、細胞分化に伴ってDNA再編成があるIgH,TCR遺伝子座に着目したクロマチン解析を行うために、胎仔肝臓から造血幹細胞をFACSソートしてストローマ細胞上で培養するin vitro B細胞分化系を立ち上げつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、ヒストンメチル化酵素Whsc1の機能解析を、すでに確立していた遺伝子欠損MEF細胞を用いて行う予定であった。しかし個体異常を反映させて、さらに発生分化に伴ったDNA切断応答を伴うリンパ細胞のDNA再編成過程でWhsc1の機能解析を行う方が、将来性が高いと判断したために、実験系の確立に本年度、集中した。 計画当初より、有効な実験系ができつつあるが、機能解析の予定はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
In vitro B,T細胞分化系でヒストンメチル化酵素Whsc1欠損による異常を具体的に遺伝子発現および遺伝子再編成異常として明らかにする。解析はIgHおよびTCR遺伝子座に着目すると共に、ゲノムワイドに網羅的に行う。 In vitro B,T細胞分化系を用いて、ゲノム異常が出現する段階で、Whsc1の複合体解析を行う。
|