研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
22131005
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安井 明 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60191110)
|
キーワード | クロマチンリモデリング / 二重鎖切断 / 非相同末端結合 / 相同組換え / 癌治療 |
研究概要 |
今年度は、2010年の暮れにMolecular Cellに発表したクロマチンリモデリング因子のDNA二重鎖切断修復への関与の機構の解明と、同じ論文で発表したヒト細胞での転写と修復を同時に活性化させ、蛋白質の集積を可視化して比較出来る実験系の開発を進めた。クロマチンリモデリング因子の解析は74種類のヒトリモデリング因子に広げ、それぞれの発現ノックダウンによりDNA二重鎖切断修復に与える影響をGFP-KU蛋白質のレーザー照射部位への集積への影響(これらのリモデリング因子が二重鎖切断の修復系の一つであるnon-homologous end joining(NHEJ)が始まる為に必要なリモデリングであるなら、ノックダウンによりKUの集積が阻害されるであろうという仮定を検証)を調べた。その結果は50%以上のりモデリング因子のノックダウンがKUのレーザー照射域への集積を軽減した。その中でも、最近の癌細胞のゲノムシークエンシングで腎癌や胃癌で変異が見つけられ、その発現も欠損しているSWI/SNFファミリーのリモデリング因子ARID1Aとそれと相同性を持つARID1Bの発現ノックダウンによる影響を調べたところ、それらのいずれの発現低下が起きても、NHEJの機能が阻害され、X線に感受性になる事が分った。このことは、このような癌が放射線などに感受性である可能性を示唆し、癌治療に役に立つ。転写と修復をヒト細胞内での同じ場所で可視化して解析する系を構築した。この系を用いてそれぞれのクロマチンリモデリング因子が転写と修復の開始に伴い集積する機構を明らかにする事が可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二重鎖切断の修復に影響するクロマチンリモデリング因子の同定、発癌に関与する因子の同定と癌治療の方法の発見、さらに転写と修復を比較して関与するクロマチンリモデリングの可視化解析を可能にした事等。
|
今後の研究の推進方策 |
クロマチンリモデリング因子を欠損した癌細胞を、その修復欠損の性質を用いて効果的な癌治療の方策を開発する事。
|