研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
22131007
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山縣 ゆり子 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (40183678)
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研究分担者 |
森岡 弘志 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (20230097)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | タンパク質 / クロマチンリモデリング / ゲノム安定性 / 構造生物学 |
研究実績の概要 |
本研究では、ゲノム修復、複製、転写のカップリングと普遍的なクロマチンリモデリング機構の分野におけるさらに新しい視点で、他に波及効果の大きい点として、1)裸のDNA ではなくクロマチンレベルでのDNA を考慮する構造生物学として、クロマチンリモデリングに関わるタンパク質複合体のX線結晶構造解析、2)ゲノム修復、複製に関わる酵素に関して時間軸も加えた4 次元構造(反応過程の追跡)レベルの機能解明と3)これまでの構造生物学ではほとんど考慮されて来なかった水素原子の位置(超高分解能X 線結晶構造解析と中性子結晶構造解析を合わせた精密構造解析)のレベルでの働く仕組みの解明、以上を目的としている。 本年度は、ATP依存的リモデリング複合体ファミリーの中で安井らが損傷認識とカップルして働くと発見したISWIファミリー複合体の構成タンパク質、CHRAC15/17とACF1ΔCとの3元複合体の結晶化、CHRAC15/17、SNF2HC-1の結晶化、CHRAC15/17とACF1とSNF2Hとの4元複合体の単離等を行い、放射光においてSNF2HC-1の結晶の回折実験を行った。また、本年度もJAXAが行っている宇宙での結晶化実験に参加し、hMTH1-基質並びに阻害剤とMutT-基質の結晶についてこれまでの最高分解能の回折データを得ることができた。さらに、原研との共同研究で23年度に1mmの結晶を得たのに続き、中性子構造解析に必要な1辺1.5mmの大型結晶作成にも目処がついた。最も研究が進展したのは、損傷乗越え複製に働くDNAポリメラーゼηの低温トラップ法による時分割X線結晶構造解析(4次元構造解析)で、ポリメラーゼ反応過程を詳細に解析でき、これまでの2個のMg2+の関与に加え第3のMg2+の寄与を初めて明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極めて短期間に損傷乗越え複製に働くDNAポリメラーゼηの低温トラップ法による時分割X線結晶構造解析(4次元構造解析)で、ポリメラーゼ反応過程を詳細に解析でき、これまでの2個のMg2+の関与に加え第3のMg2+の寄与を初めて明らかにできたことが予想以上の成果である。さらに水素原子の位置を決める研究では、中性子構造解析と超高分解能X線構造解析をあわせて行うために、大型結晶、高品質結晶の調製が必須であるが、原研、JAXAとの共同研究で予想通り進展している。また、クロマチンリモデリングに関わるタンパク質複合体ISWIに関しても順調に4元複合体の同定やそれぞれの構成タンパク質の結晶化が進展しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
CHRAC タンパク質の構成タンパク質ACF1ΔC1、SNF2HC-1、CHRAC15/17 をそれぞれの遺伝子を単独のものや共発現によって、SF9や大腸菌から大量発現させ、単独タンパク質やタンパク質複合体を高純度に精製する。4元(ACF1ΔC1、SNF2HC-1、CHRAC15/17)複合体、3 元(ACF1ΔC1、CHRAC15/17)複合体、2 元(ACF1ΔC1/SNF2HC-1 並びにCHRAC15/17)複合体とSNF2HC-1 の結晶構造解析を目指し、結晶化スクリーニングを行う。その際、種々の鎖長のタンパク質試料を調製し、それぞれの相互作用解析から、相互作用が強く結晶化に適する試料を選ぶことで、結晶化を成功に導く。
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