計画研究
本研究では、ゲノム修復、複製、転写のカップリングと普遍的なクロマチンリモデリング機構の分野におけるさらに新しい視点で、他に波及効果の大きい点として、1)裸のDNA ではなくクロマチンレベルでのDNA を考慮する構造生物学として、クロマチンリモデリングに関わるタンパク質複合体のX線結晶構造解析、2)ゲノム修復、複製に関わる酵素に関して時間軸も加えた4 次元構造(反応過程の追跡)レベルの機能解明と3)これまでの構造生物学ではほとんど考慮されて来なかった水素原子の位置(超高分解能X 線結晶構造解析と中性子結晶構造解析を合わせた精密構造解析)のレベルでの働く仕組みの解明、以上を目的としている。本年度は、ATP依存的リモデリング複合体ファミリーの中で安井らが損傷認識とカップルして働くと発見したISWIファミリー複合体の構成タンパク質を対象に、4元(ACF1ΔC1、SNF2HC-1、CHRAC15/17)複合体、3 元(ACF1ΔC1、CHRAC15/17)複合体、2 元(ACF1ΔC1/SNF2HC-1 並びにCHRAC15/17)複合体とSNF2HC-1 のX線結晶構造解析を目指した高純度精製について、それぞれを最も取扱い易い大腸菌の系で共発現、単独発現が確立し、結晶化スクリーニングを行った。昨年度結晶化できたSNF2HC-1 についてX線結晶構造解析を行い、その立体構造に基づき、SPRやGST-Pull downアッセイ、トリシプシン限定分解などの結果を参考にhCHRACモデルを提案した。他の複合体についても微小であるが結晶が出来る確率が増えてきた。MutT とhMTH1 の時分割X 線解析は、Mg2+を用いて結晶内反応の追跡条件の検討を行った。hMTH1の精密構造解析については、宇宙実験でこれまでの最高分解能結晶が得られ、結晶の大型化も進んだ。
2: おおむね順調に進展している
非常にタンパク質調製が困難であったACF1についてこれまで、大腸菌以外に酵母、昆虫細胞、動物細胞等を検討してきたが、本年度に大腸菌での発現系を構築できたことにより、それぞれの目的複合体4種について、結晶化を行う上で必須の安定な状態での調製できるコンストラクションの選定が進み、それぞれの複合体について、微小であるが結晶が出来る確率が増えているので、構造解析可能な結晶も近々得られるものと期待している。また、SNF2HC-1 についてX線結晶構造解析を行い、明らかになった立体構造から、これまでの相互作用解析の結果を満足するhCHRAC(AFC1、SNF2H、CHRAC15、CHRAC17の4サブユニットからなる)の結合モデルを提案でき、単独サブユニットのC末領域のみのX線構造解析も大変有効であることが示された。MutT とhMTH1 の結晶内反応の追跡については、Mg2+を用いた条件での検討が進んでいる。hMTH1の水素の位置のレベルでの精密構造解析については、中性子解析用の大型結晶の作成が軌道に乗ったので、データ測定できる可能性が高い。
これまでに相互作用が強く結晶化に適すると判断されたコンストラクションを中心にタンパク質試料を調製することにより、4元(ACF1ΔC1、SNF2HC-1、CHRAC15/17)複合体、3 元(ACF1ΔC1、CHRAC15/17)複合体、2 元(ACF1ΔC1/SNF2HC-1 並びにCHRAC15/17)複合体の構造解析可能な結晶の作成を目指す。宿主は大腸菌を用いるので、1種類の複合体の発現、高純度精製、結晶化スクリーニングまでのサイクルが早く回すことができ、タンパク質調製の領域に関する工夫を多数行うことで、良好な結晶を得る。MutT とhMTH1 の結晶内反応の追跡とhMTH1の水素の位置のレベルでの精密構造解析については、平成26年度の実施計画に基づき進める。
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ファルマシア
巻: 50 ページ: 393-397
生物物理
巻: 53 ページ: 254-257