研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
22131009
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 亀代次 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (80144450)
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キーワード | ヌクレオチド除去修復 / 紫外線高感受性症候群 / 色素性乾皮症 / コケイン症候群 / XPF-ERCC1 / UVSSA / USP7 / CSB / ユビキチン化 |
研究概要 |
(1)色素性乾皮症F群蛋白質(XPF)はERCC1とヘテロ2量体を形成し、構造特異的エンドヌクレアーゼ活性をもち、ヌクレオチド除去修復やDNA鎖間架橋修復に関与する。一方、XPFやERCC1遺伝子に突然変異を持つ患者は色素性乾皮症(XP-F)の他にコケイン症候群(XP-F/CSあるいはXFE)を発症することより、XPF機能の多様性が示唆された。今回、我々はXPF蛋白質がキネシン蛋白質Eg5と結合することを見つけた。Eg5は、細胞分裂期において中心体や紡錘体の形成と分離に必須の蛋白質である。免疫蛍光染色所見でも、XPFはEg5と分裂期で共局在した。また、siRNAを用いたXPFのノックダウン細胞は高頻度に細胞分裂の異常、細胞核の形態異常を示した。さらに、XP-FやXP-F/CS患者細胞でも高頻度に細胞分裂の異常、細胞核の形態異常が認められた。以上の結果は、XPFが正常な染色体分配機構の制御に必須の役割を担っており、XP-FやXFE患者ではその機構に異常をもつことを示唆する。(2)紫外線高感受性症候群(UV-sensitive syndrome:UV^SS)は、日光過敏性と皮膚色素沈着や乾燥を臨床的特徴とする遺伝疾患で、「転写と共役した修復」(transcription-coupled repair:TCR)を特異的に欠損している。我々は、未知であった遺伝的相補性A群UV^SS(UV^SS-A)の原因遺伝子を、微小核融合法による染色体導入法、比較ゲノムハイブリダイゼーション法、BAC DNAのトランスフェクション法等を用いてクローニングした。UVSSAと命名したこの遺伝子は新規遺伝子で、その機能の解析を行った。UVSSAのsiRNAによるノックダウンによって細胞はTCR欠損を示した。また、UVSSA蛋白質は脱ユビキチン化酵素USP7と複合体を形成し、CSB蛋白質の脱ユビキチン化に関与し、DNA損傷後の転写の再開に関与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究計画の一つであった遺伝的相補性A群UV^SS(UV^SS-A)の原因遺伝子をクローニングし、その機能解析を行い、その成果を学術雑誌に掲載した。さらに、XPFの新規機能も明らかにし、その成果を学術雑誌に掲載した。XPGの新規機能の解析については引き続きその解析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)TCRにおけるCSB蛋白質のユビキチン化、脱ユビキチン化の機構とその意義を解明する。そのため、CSBをユビキチン化するユビキチンリガーゼを特定する。また、USP7蛋白質の脱ユビキチン化活性に及ぼすUVSSAの機能を明らかにする。CSB蛋白質のユビキチン化されるリジン残基を特定してのち、紫外線照射によってユビキチン化されない変異CSBを発現する細胞を樹立する。そのTCR機能、例えば、紫外線感受性、DNA鎖特異的DNA損傷の除去能、紫外線照射後のRNA合成の回復、転写を停止したRNAポリメラーゼIIOへのTCR因子のリクルート能を解析し、CSBユビキチン化の意義を明らかにする。XPGが転写伸張にも関与するという作業仮説のもと、ChIP法によりXPG蛋白質の転写部位へのリクルートを検証し、その活性がXP-GあるいはXP-G/CS患者細胞ではどうかを明らかにする。
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