研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
22131009
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 亀代次 大阪大学, 生命機能研究科, 特任教授 (80144450)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コケイン症候群 / 転写と共役した修復 / RNAポリメラーゼII / ユビキチン化 / UVSSA / USP7 / XPG / FOS遺伝子 |
研究実績の概要 |
1)コケイン症候群A群タンパク(CSA)複合体ユビキチンリガーゼ(E3)によりユビキチン化されるRPB1(RNAポリメラーゼII最大サブユニット)のリジン残基を同定し、このリジンをアルギニンに置換した変異RPB1発現細胞を作成した。この細胞は、UV高感受性やUV照射後のRNA合成の回復能の低下を示した。本年度は、この変異細胞において、DNA損傷部位で停止したRNAポリメラーゼIIへのTCR因子のリクルートについて調べたが、異常は認められなかった。2)TCR機構に異常をもつUVsS-A群の原因遺伝子産物UVSSAを同定し、脱ユビキチン化酵素USP7と結合することを明らかにした。本年度は、UVSSAがE3活性を持つこと、USP7の脱ユビキチン化活性を抑制することを明らかにした。3)CHIPアッセイを用い、XPG、TFIIHサブユニットがEGF刺激後に前初期遺伝子FOSの転写開始部位のみならず、コード領域にもリクルートされることを明らかにした。また、XPGをノックダウンした細胞ではTFIIHサブユニットのFOS遺伝子領域へのリクルートは低下した。さらに、XP-G患者細胞、XP-G/CS患者細胞ではともにEGF刺激後のFOS遺伝子発現は抑制されたが、XP-G/CS細胞の方がより強く抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)我々の研究結果より、CSA複合体E3によるRNAポリメラーゼII最大サブユニットのユビキチン化がTCR機構に必須であることが明らかになった。その具体的な機構や意義を明らかにすべく、解析を行ったが、予想に反し、DNA損傷部位で停止したRNAポリメラーゼIIへのTCR因子のリクルートに異常は認められなかった。2)多数のTCR因子と相互作用する新規TCR因子UVSSAを発見することによって、これまで考えられていた以上に、TCR機構が複雑な制御を受けていることが明らかになった。UVSSAがE3活性を持つこと、USP7の脱ユビキチン化活性を抑制することを明らかにし、今後の研究発展に向けた端緒を得た。3)EGF刺激後のFOS遺伝子発現が、XP-G患者細胞、XP-G/CS患者細胞ではともに抑制されたが、XP-G/CS細胞の方がより強く抑制された。XPGが転写伸張過程に必須であり、CS徴候は転写異常に由来することを強く示唆した。4)XPDタンパク質がMMS19等と新規複合体MMXDを形成することを報告した。XPDがFe-Sクラスタータンパク質であることから、MMS19がcytosolic iron-sulfur cluster assembly (CIA) 因子であり、XPDの構造に必要と考えた。交付申請書には記載しなかったが、本年度、MMS19複合体の研究を進展させた。MMS19をノックダウンした細胞では、XPDをはじめFe-Sクラスターをもつ種々のタンパク質が著明に減少し、MMS19複合体がCIA因子であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
1)CSA複合体E3でユビキチン化されるRPB1のリジン残基をアルギニンに置換した変異RPB1発現細胞はUV高感受性を示したにも拘わらず、DNA損傷部位で停止したRNAポリメラーゼIIへの、CSBを始めとしたTCR因子のリクルートに異常は認められなかった。今後、転写鎖上ピリミジンダイマーの選択的修復機構に異常を持つか否かについて検証する。2)UVSSA-USP7複合体のTCR機構における役割解明を目的として、USP7とUVSSAの相互作用に必須のアミノ酸を同定し、それらを他のアミノ酸に置換した変異細胞のTCR機構の解析を行う。UVSSAのE3活性は保持しているが、自己モノユビキチン化されない変異UVSSAを発現する細胞を作成し、そのTCR機構を解析する。 3)TCR機構においてCSBは重要な役割を果たしているが、依然として不明な点が多い。種間でよく保存されているC末端を種々な長さに欠損する変異CSBを発現する細胞を作成し、それらのTCR機構、および、UV照射後の翻訳後修飾の有無とその意義について調べる。
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