研究概要 |
生物のゲノムはDNAとタンパク質の複合体であり,複製および転写装置は結合タンパクを適切に処理しながらDNA合成と転写を行う。しかし,DNA損傷因子はしばしば結合タンパク質をDNAに固定化し,生じたDNA-タンパク質クロスリンク(DPC)損傷は複製と転写を阻害する。本研究では,DPC損傷で停止した複製装置および転写装置の複製・転写継続機構とこれに関わるクロマチンリモデリングの役割について研究を進めている。複製については,DPCがpolymerase blockあるいはhelicase blockのいずれとして作用するのか,in vitro系を用いて検討している。転写については,レポーターアッセイを用いたDPCの転写影響解析系を構築した。ルシフェラーゼ遺伝子発現はレポータープラスミドに含まれるDPC量依存的に低下することが明らかとなり,今後は,この系を用いて転写継続機構を調べていく。クロマチンリモデリングについては,酵母で相同組換えへの関与が示唆されているINO80クロマチンリモデリング複合体に注目し,同複合体サブユニットのノソクダウンを行った。RUVBL1サブユニットに対するshRNA発現プラスミド(4種)およびsiRNA(3種)のノックダウン効果をWestern法で調べた結果,前者では60-70%,また後者では40-60%のノックダウン効果が得られた。現在,shRNA安定発現細胞をクローニングしている。また,ACTR5についても同様な検討を行った。shRNA発現プラスミド(4種)では有意なノックダウン効果は得られなかったが,siRNA(3種)では20-70%のノックダウン効果が得られた。
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