研究領域 | ゲノム複製・修復・転写のカップリングと普遍的なクロマチン構造変換機構 |
研究課題/領域番号 |
22131010
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井出 博 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30223126)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | DNA複製 / ゲノム損傷 / クロマチンリモデリング |
研究概要 |
これまでの研究で,DNA-タンパク質クロスリンク損傷(DPC)はDNA複製および転写を強く阻害することから,致死性の高い損傷であることを明らかにした。アルデヒド化合物は,ゲノムにDPCを誘発することが報告されているが,DPCが主要な致死損傷かどうかは明らかにされていない。そこで,生体内の代謝で生じるformaldehyde(FA)およびacetaldehyde(AA)の致死損傷(DPC,DNA二本鎖切断(DSB),DNA鎖間架橋(ICL))について検討した。10%生存率で細胞を処理し,DPCおよびDSBを定量した。FAではDPCの生成が認められたが,AAでは認められなかった。DSBは,FA・AAともに生成したが,その生成量は少なかった。ICLについては,修復欠損細胞を用いて遺伝学的に検討した。XPF欠損細胞およびファンコニー貧血患者由来細胞(FancA,FancC)はともに,FA・AAに対し高感受性を示したことから,ICLの生成が示唆された。この結果から,FAではDPCとICL,またAAではICLが主要な致死損傷であり,アルデヒド化合物でも致死損傷のスペクトルが異なっていることが示された。今後の細胞を用いた研究に重要な知見が得られた。DPC修復におけるクロマチンリモデリングについては,INO80およびTIP60複合体のサブユニットであるRUVBL2をsiRNAでノックダウンし,5’-aza-2’-deoxycytidine(azadC)およびcisplatin(cisPt)に対する感受性を調べた。ノックダウン細胞は,azadC・cisPtともに感受性を示したが,感受性は相同組み換え欠損細胞に比べ低かった。他のリモデリング複合体による補償経路が関わっているか検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞レベルでDPCの研究を行うためには,DPC誘発選択制の高い損傷誘発剤を用いる必要があるが,アルデヒド化合物や抗がん剤をスクリーニングし幾つかの候補が得られた。クロマチンリモデリング複合体の関与については,RUVBL2ノックダウン細胞が予想外に低い感受性を示したことから,他の補償経路などについても合わせて検討を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
DPC誘発選択制の高い損傷誘発剤を用い細胞を処理し,ゲノムにおけるDPC誘発と除去動態を調べるとともに,停止した複製フォークの形態観察を行い,DNA側の性状変化から見た解析を行う。クロマチンリモデリングについては,INO80およびTIP60に加え他の複合体サブユニットノックダウンの影響も検討し,相同組換えを介した複製再開機構への関与を明らかにしていく。
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