本研究は、ZZ/ZWおよびXX/XYという異なる性決定様式をもつ脊椎動物種(アフリカツメガエルおよびニホンメダカ)を用い、WあるいはY性染色体上に座位する性決定遺伝子の有無による初期性差構築の分子機構を遺伝的雌雄あるいは2種動物間で比較解析し、脊椎動物における性差構築システムの多様性および普遍性を考察することを目的としている。初年度である本年度は、まず、W染色体上に性(雌)決定遺伝子DM-Wを擁するアフリカツメガエルを用い、知見がほとんどない性決定および性決定後の初期性差構築の分子機構に関して、以下の解析および考察を行った。1.ZZ/ZW型の性決定様式を持つアフリカツメガエルにおける性(雌)決定:ZW個体では、性決定期の始原生殖細胞(PGC)の支持細胞で、DM-WとDMRT1タンパク質の共局在が観察された。さらに、トランスジェニックカエルおよび培養細胞系での解析等から、DM-WがDMRT1の機能を抑制する事によって、雌化(卵巣形成)が誘導されることが示唆された(Development 2010)。2.アフリカツメガエルDMRT1遺伝子:発現およびトランスジェニックカエルでの解析等から、DM-W非存在のZZ生殖巣では、性決定期のPGC支持細胞で発現するDMRT1遺伝子が、雄化を誘導することがわかった(Development 2010)。3.XX/XY型の性決定様式を持つメダカのDMRT1遺伝子:転写開始点の解析から、メダカのDMRT1は、アフリカツメガエルの2つのDMRT1遺伝子(アルファとベータ)のうち、アルファと同じエクソン/イントロン構造である事が推察された。
|