研究領域 | 性差構築の分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
22132003
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 道彦 北里大学, 理学部, 准教授 (90240994)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 性分化 / 性決定 / Y染色体 / W染色体 / ツメガエル / メダカ / マウス / 性決定遺伝子 |
研究実績の概要 |
本研究は、ZZ/ZWおよびXX/XYという異なる性決定様式をもつ脊椎動物種(前者はアフリカツメガエル、後者はメダカ、マウス)を用い、WおよびY性染色体上に座位する性決定遺伝子の機能および分子進化、あるいは性決定遺伝子の有無による初期性差構築の分子機構を、それぞれの種の遺伝的雌雄および動物間で比較解析し、脊椎動物における性差構築システムの多様性および普遍性を考察することを目的としている。3年目である本年度は、これまでの成果を受け、以下の結果を得た。1.ZZ/ZW型のアフリカツメガエルにおいて、性決定期後のZZ生殖巣の体細胞で特異性ある発現が認められるTGFβファミリーに属する遺伝子を2種同定した。精巣構築型リガンド遺伝子と考えられる。2.哺乳類マウスとは違い、アフリカツメガエルでは性決定直後から性ホルモン合成系遺伝子Cyp17が遺伝的雌雄共に発現し、Cyp19が遺伝的雌(ZW)に特異的に発現する。Cyp17発現細胞を調べた結果、性決定期後、生殖巣の前後軸にそって、発現細胞塊がドット状に存在することがわかった。ZZでは精巣化に伴い、このドット状発現は消失したが、ZWでは卵巣化が進んでも、その構造は維持された。また、Cyp19発現細胞の解析から、エストロゲンは、卵巣腔構造の構築に関与することが示唆された。3. マウス、アフリカツメガエル、メダカのDmrt1、およびそのパラログの性決定遺伝子であるメダカDmy、アフリカツメガエルDm-Wに関して、DNA結合性をin vitroで比較解析した結果、それぞれ結合性に差異があることがわかった。今後、標的遺伝子とDNA結合能の共進化に関して解析を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)3年目である本年度は、ZZ/ZW型のアフリカツメガエルで、初期性差構築期で性ホルモン産生細胞が特徴的な細胞塊を構成し、卵巣形成への寄与を示唆する結果を得た。XX/XY型の動物種との性差構築における進化的差異と普遍性を議論できると考えられ、概ね順調に進展していると思われる
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、以下の2点である。①本年度、アフリカツメガエル性分化初期生殖巣で見つけた性ホルモン産生細胞の特徴的な細胞塊に関し、機能探索を行うと共に、XX/XY型の脊椎動物種で比較検討を行う。②アフリカツメガエル性決定遺伝子Dm-Wのプロトタイプ遺伝子Dmrt1の細胞特異的ノックダウン個体を同種で作製、解析を行ったのち、脊椎動物でオス化システムにおけるDmrt1の機能を進化的に議論する。③WおよびY染色体連鎖の性決定遺伝子Dm-WおよびDmy、Sryから合成される転写因子に関し、性決定因子としての機能進化に関して、比較解析を行う
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