研究領域 | 性差構築の分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
22132004
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
緒方 勤 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40169173)
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研究分担者 |
筒井 和義 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (20163842)
深見 真紀 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (40265872)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 性差構築 / ヒト疾患解析 / ゲノム / エピゲノム / 遺伝子機能 / 性分化疾患 / 高密度アレイCGH解析 / 次世代シークエンサー解析 |
研究実績の概要 |
本年度における主たる成果は以下の通りである。 (1)MAMLD1ノックアウトマウス解析:MAMLD1は、2006年にわれわれが同定した性分化疾患(尿道下裂)責任遺伝子である。本年度はMamld1ノックアウトマウスにおいて、男性ホルモン産生酵素の活性低下は存在するが、性分化臨界期の種差などのため、マウスでは性分化疾患が生じないことを見出した。これは、男児のみの性分化疾患を生じるMAMLD1異常症の発症機序の解明に有用なデータである。 (2)アロマターゼ過剰症:女性化乳房を中核症状とするアロマターゼ過剰症において、アロマターゼ遺伝子プロモーター重複およびキメラ遺伝子形成を招くゲノム微細構造異常を同定した。そして、表現型の重症度が獲得プロモーターの発現パターンと構造により決定されることを見出した。 (3)新規ホルモン非依存性男児外性器異常発症責任遺伝子の同定:われわれは、裂手・裂足症患者の高密度アレイCGH解析により、裂手・裂足症に尿道下裂を合併する患者において第17染色体のコピー数異常を同定し、その領域の裂手・裂足症発症候補遺伝子BHLHA9が、胎児期マウスの尿道においても発現していることを見出した。さらに、停留精巣患者においてBHLHA9の変異と重複を見出している。 (4)Backdoor Pathway:テストステロンを介さない新規男性ホルモン産生経路Backdoor Pathwayがヒトにおいて存在し、生理的状態では胎児精巣で働き、病的状態では胎児副腎と永久副腎の相互作用で働くことを見出した。そして、上記46,XY性分化疾患患者においてBackdoor Pathway特異的酵素をコードするAKR1C2-4遺伝子の変異解析を開始した。これは、ホルモン依存性の外性器性差構築機序の解明に貢献すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
われわれは、ゲノム疾患としての性分化疾患をPOR異常症、アロマターゼ過剰症、SOX9異常症において見出した。また、2006年にわれわれが同定した性分化疾患(尿道下裂)責任遺伝子MAMLD1の機能解析を着実に進めている。さらに、ホルモン非依存性性差構築遺伝子候補としてBHLHA9を同定し、ホルモン依存性性差構築因子としてテストステロンを介さないジヒドロテストステロン産生経路Backdoor Pathwayがヒトにおいて生理的および病的状態において作動していることを見出した。今後、次世代シークエンサーを用いた網羅的ゲノム・エピゲノム解析を進め、新規遺伝子の発見、臨床的多様性や遺伝的異質性を招く遺伝的機序の解明に挑みたい。
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今後の研究の推進方策 |
性分化疾患のゲノム・エピゲノム解析として、下記を重視して行い、性差構築機序の解明を目指す。 (1) 性差関連疾患の遺伝子・ゲノム・エピゲノム解析:思春期年齢発症の性差構築関連疾患患者約200例におけるオリゴアレイCGH、49遺伝子を対象とする次世代シークエンサーを用いたターゲットエンリッチメント解析、家系例やまれな合併症を有する症例を対象とするエクソーム解析、尿道下裂患者の外性器皮膚組織を用いた男性ホルモンシグナル関連遺伝子のプロモーター・エンハンサーのメチル化解析を行う。 (2) 性差構築遺伝子の機能解析:平成22-24年度にターゲットエンリッチメント解析で変異が同定された性差構築候補遺伝子の機能を、レポーターアッセイ、培養細胞やメダカを用いたノックダウン実験、蛋白局在解析、免疫沈降、アレイ発現解析で解析する。 (3) 平成22-24年度における重要な新規知見の解析推進:(i) BHLHA9遺伝子:国内外の共同研究による新規変異陽性患者の同定、遺伝子発現パターン解析、遺伝子導入・ノックダウン生物の解析、外性器皮膚繊維芽細胞を用いたノックダウン実験を行う。(ii) Backdoor Pathway: 尿道下裂などの胎児期発症性分化疾患患者約150例を対象として、Backdoor Pathwayを構成する酵素AKR1C2-4(特にAKR1C2)をコードする遺伝子の変異解析と欠失解析を行う。変異が同定された場合は、in vitro実験で病的意義の検討を行う。(iii) UTY遺伝子:低身長男児における変異解析を進めると共に、同定され変異遺伝子の機能解析を行う。
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