研究概要 |
種々の脊椎動物種におけるゲノム配列の解読完了や、次世代シークエンサーの開発などの技術革新により、比較ゲノム解析、エピゲノム解析や発現制御の解析などが急速に進展した。それらのデータ解析を通して、ゲノムスケールで具体的かつ基本的な生命現象である「性差」を解析対象とすることが可能になった。本研究は、ゲノム情報の解析にもとづき、脊椎動物全般に共通、あるいは動物種に固有の性差構築メカニズムを解明することを目的として、以下の研究を行う: (1) 性差構築を支配するシスエレメントと遺伝子の同定. (2) 性差構築を支配するシスエレメントと遺伝子の比較ゲノム解析. (3) 性差構築を支配するシスエレメント群や遺伝子群を協調的に機能させるメカニズムの解明. 本年度は、ゲノムアライメントおよび次世代シークエンサーから得られ公開されているトランスクリプトームのデータ解析から、選択的スプライシングの制御に関与したシスエレメントの同定をおこない。論文として発表した(Suyama et al.Nucleic Acids Res.38 : 7916-7926, 2010)。ここで得られた結果は、直接、性差に関与するものではないが、今後、性差特異的なスプライシング様式の検出への応用が期待できるものである。さらに、性特異的遺伝子発現を制御するシスエレメントの探索に向け、次世代シークエンサーのデータ処理のための計算機システムを整備し、必要なプログラムの開発および実装をおこなってきた。中でも、ほかには見られない優れた視覚化プログラム群の開発は特筆に値する。このプログラム群により、ゲノム上の特徴を広範囲にわたり、迅速に精査することが可能になった。現在、このプログラム群を用い、主に計画研究1(諸橋)と計画研究5(山田)によって得られた転写因子結合部位に関する解析を進めている。
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