研究実績の概要 |
これまでのWnt等の細胞増殖因子シグナル研究を発展させて外生殖器間葉で機能する重要な性差エフェクター遺伝子を見出した。男性ホルモン(アンドロゲン)の作用の直下にて作用する、外生殖器形成の制御遺伝子として転写因子MafBを同定し論文を出した(Suzuki at. al.,PNAS,2014)。これまでPSCBを含め、アメリカ内分泌学会(Endo)やGRC(2回)で招待講演を行った。また男性ホルモンの作用を受ける性差構築制御遺伝子について網羅的に解析を行った。その結果、複数の候補遺伝子が得られた。さらに骨盤における性差形成機構(Ipulan et. al., Endocrinology,2014) や前立腺の過形成の発生機構も明らかにした(Omori et.al.,Endocrinology,2014)。
また、MafB遺伝子においてはアンドロゲンが作用する以前にその転写はサイレントな状況になっており、胎生中期において誘導がかかった後、その誘導が消失する。このような外生殖器におけるアンドロゲンの作用による遺伝子の誘導性の変遷についてエピジェネティックレギュレーションの関与を解析した。トリコスタチン(TSA)を含む、阻害剤を用いた実験を行った。胎生中期に特異的なMafB遺伝子の誘導について、エピジェネティックな制御が関与している事が示唆された。この事から男性ホルモンシグナルが作用する以前においてクロマチンに対して作用する事により、MafBのような制御遺伝子の人為的な発現制御が可能になる可能性が推察された。この様にして今後性差構築から性的な可逆性の解析について、解析の手がかりを得た。
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