研究概要 |
HLA領域内の非HLA遺伝子の中には,非コードRNAが,偽遺伝子に由来する高分子RNAを含め多種多数存在する。転写制御をはじめとするその多彩な機能に鑑みれば,HLA領域内ncRNAの機能と多様性を理解することは,本領域が掲げる「HLAの成り立ちの進化学的解明」および「免疫応答関連疾患発症におけるHLAの役割の解明とHLAを標的とした分子創薬のための免疫抑制分子の解明」という目的の達成に不可欠である。本研究では,次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析により,HLA領域内に存在する高分子ncRNAをまず明らかにする。平成22年度は,HLA遺伝子型が既知で,日本人に比較的頻度の高いHLA型を有するEBV細胞株7株からmRNAを抽出し,イルミナ次世代シークエンサーを用いたmRNA-seqを実施した。得られたデータを基に,6番染色体レファレンスゲノムへのマッピングを実施し,これまでに知られているコード領域にマップされない非コードRNA候補領域を約50カ所同定した。すなわち,この候補領域についてRT-PCRによって転写産物を確認し,これを強制発現あるいはノックダウンすることによってその標的遺伝子を同定するための基盤となる情報を得ることができた。これを端緒として,本領域内で解析が進められる他の免疫関連疾患との相関が示されたHLAアレルや遺伝子多型と連鎖不平衡にあるncRNAを抽出し,その機能と疾病発症との関連を解明する。
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