研究概要 |
HLA領域内の非HLA遺伝子の中には,非コードRNAが,偽遺伝子に由来する高分子RNAを含め多種多数存在する。転写制御をはじめとするその多彩な機能に鑑みれば,HLA領域内ncRNAの機能と多様性を理解することは,本領域が掲げる「HLAの成り立ちの進化学的解明」および「免疫応答関連疾患発症におけるHLAの役割の解明とHLAを標的とした分子創薬のための免疫抑制分子の解明」という目的の達成に不可欠である。また,ncRNAはエピゲノムによる遺伝子発現制御にも重要な役割を演じ,本研究が扱うテーマはHLA領域のエピゲノムの解明も含む。 平成23年度は,DPB1アレルとHLA領域内DNAメチレーションレベルとの相関を解析し,DPB1アレル特異的なHLA領域内エピジェネティックスを明らかにした。DPB1遺伝子型が明らかなEB細胞株92検体について,イルミナ45万DNAメチル化サイトチップを用い,DNAメチル化レベルを0から1の連続値として取得した。拡大HLA領域(26-34M)に位置する14,224サイトを解析対象とした。これらのサイトにおけるメチル化レベルと,本検体群で5%以上の頻度を示したDPB1*02:01,*03:11,*04:01,*04:02,*05:01,*0901,6アレル間のアレル数との相関を線形回帰モデルにて検定した。その結果,BF補正後も有意であるメチル化サイトを28サイト同定し,そのうち21サイトがDPA1あるいはDPB1座に位置していた(それぞれ12および9サイト)。この21サイトのうち,18サイトは,*05:01のアレル数に応じてメチル化が減少する方向性を示していた。また,この21サイトのうち17サイトには,SNPがメチル化サイトと同位置もしくは+1baseの位置に存在しており,*05:01とLDにあるSNPを介してメチル化レベルが規定されると考えられた。DPB1*05:01は,DPA1およびDPB1遺伝子領域に位置しDNAメチル化サイト近傍に存在してメチル化レベルに影響を与えるSNPとLDの関係にあるため,特有の低DNAメチル化レベルを保持しており,それがα鎖とβ鎖両者の発現レベルを上げている可能性がある。
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