研究実績の概要 |
近年のゲノムワイド相関解析により、免疫関連疾患と強く相関する遺伝子多型が HLA領内に同定され、免疫関連疾患と HLAとの相関があらためて確認された。本研究では、HLA領域のエピゲノム多様性を解明し、エピジェネティックスの観点から疾患発症におけるHLA領域の意義解明を目指す。さらに、領域内研究者と連携してゲノム解析を推進し、HLAと疾病との関連の解明を目指す。平成26年度は、これまでに行ってきたA04笹月班との共同研究をさらに進め、グレーブス病と橋本病の遺伝要因の差異を解明するために、ゲノムワイドでの相関解析を、グレーブス病547名、橋本病446名に対して二段階スクリーニングにて実施し、最終的に、P = 3.90 × 10(-8); OR = 1.77; 95%CI = 1.44-2.17の有意差を示すSNPをVAV3遺伝子座に同定した(rs7537605)。コントロール群1363名との比較から、VAV3遺伝子座は橋本病に特異的な感受性遺伝子であることを明らかにした。またHLAアレル特異的にDNAメチル化レベルが変化する領域を同定するために、A, C, B, DRB1, DQB1, DPB1遺伝子座について網羅的な解析を進め、前年度までに同定した、DPB1*05:01に特異的な低DNAメチル化CpGサイトに加え、Cw*07:02とBF補正後も有意に関連するCpGサイトをC遺伝子座領域内の47サイト中18サイトに同定した。47CpGサイトのメチル化レベルを集約した主成分分析において、Cw*07:02を有する個体は第一主成分を指標として他の個体と明確に判別できた。このことは、Cw*07:02がアレル特異的に特有のDNAメチル化レベルを遺伝子領域内に有することを示している。Cw*07:02は他のアレルと比較して低発現であることが知られており、本研究が明らかにした特有のエピゲノム状態がCw*07:02の発現を規定している可能性がある。
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