研究概要 |
本年度は、以下の三つの項目について研究を推進した。 1)HLAの進化学的なパラメータの検証:対立遺伝子の分岐年代、対立遺伝子の数、多型維持に必要な自然選択の強さなどは、申請者らの研究グループが中心となり1990年代初頭のデータに基づき推定された(Satta et al. 1993, 1994)。しかしそれ以降、蓄積しているデータを用いた解析は行われていなかったため、新たに加わったデータにより、過去の推定値が現在のデータでも支持されるかどうかを検証をおこなった。現在クラスII遺伝子座のDRB1とDPB1について解析を終えており、推定値については、1990年代初頭と大きな違いがないことが明らかになっている。 2)ペプチド結合領域の進化過程:HLA各遺伝子座での、ペプチド結合領域とそれ以外の部分について対立遺伝子の塩基配列をもとに、系統樹作成を行った。その結果、これらの領域で、系統樹上の位置が大きく異なる、対立遺伝子がいくつか存在することが明らかになった。さらに、ヒトと比較して各遺伝子座が多重に重複をしている旧世界猿MHCでのハプロタイプの生成に関して、ペプチド結合領域の形成との関連に注目して解析を行い、その結果は現在国際誌へ投稿準備中である。 3)HLAの多型を維持する進化モデルの検討。 「divergent allele advantage model」について、コンピュータシミュレーションを用いて従来の「symmetric balancing selection model」との違いを明らかにするため「divergent allele advantage model」の特性をしらべるための文献検索を行った。
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