研究概要 |
本年度は、以下の四つの項目について研究を推進した。 1) HLAの進化学的パラメータの検証: HLA-A,B,C,DRB1,DQB1,DPB1の6遺伝子座についての、組み換えの影響のない配列を選択して、進化学的パラメータ(突然変異率、集団の有効な大きさ、自然選択の強さ)を推定した。得られた推定値は、1990年代前半の推定値とほとんど変わらなかった。現在この結果は国際誌に投稿準備中である。 2) ペプチド結合領域(PBR)の進化過程の解明: 上記1)の解析を通して、PBRでの特異なアミノ酸置換の様相が明らかになった。対立遺伝子間に蓄積するアミノ酸の置換速度は、一度減速して、再び加速する。このような進化の様相には、PBRの機能分化が関与していることが明らかになった。この結果は、現在、国際誌に投稿準備中である。またこの他に、アカゲザルとの比較研究のためアカゲザルのMHCの対立遺伝子配列を収集した。 3) HLAの多型を維持する進化モデルの検討: 「divergent allele advantage model」について、コンピュータシミュレーションを行うためのシミュレーションプログラムの作成を行っている。 4) ハプロタイプの成り立ちについての検討: 日本人集団に特有なハプロタイプの起源を明らかにするために、ハプロタイプのSNP解析を行い、ハプロタイプを構成する基本的なブロックの同定を定量的に行う。そのために必要な、解析プログラムの作成を行っている。
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