計画研究
現在のHLAの多様性は過去数百万年にわたりアフリカという環境の中で人類の祖先が出会ったパソジェン(細菌やウィルス等)との共進化の結果できあがってきた。一方、20万年前に誕生した現生人類が経験した歴史は、HLAが経てきた歴史と比較すると非常に短時間であった。しかし、現生人類はその短い時間にアフリカから全世界へ生息環境を拡大させ、その拡散過程ではアフリカでは出会うことのない地域特異的なパソジェンに遭遇し、新たなパソジェンに適応していったことは想像に難くない。長い時間をかけてできあがった多様性と、短期間で適応する必要があった地域の特性という、環境からの異なる進化的圧力のもとで、どのようにして現在のHLA多様性が維持されてきたのかをHLAの各対立遺伝子の産物が結合できるペプチドの種類という観点から明らかにする。そのために、次に示す解析を行い結果をえた。昨年までの対立遺伝子の系統解析で、HLA-DRB1の対立遺伝子にはヒト特異的な系統でペプチド結合領域(PBR)のアミノ酸置換速度(AA rate)が速いA系統と他の霊長類と垂直伝達多型を示し、PBRでのAArateが遅いB系統とが存在することがわかった。これらの系統の特性をペプチド結合能という観点からみると、A 系統は対立遺伝子間の距離に対して、弱い正の相関を示す。一方B系統では、相関が観察されなかった。さらにA系統は特にアフリカ集団での頻度が高く、また、この対立遺伝子の分岐年代(2800万年前)を考慮すると、A系統の対立遺伝子は、現生人類と共進化してきたパソジェンに対応してきたこと、一方B系統は、むしろ他の霊長類とも共通のパソジェンに対応しており、人類は、このA系統とB系統とのバランスをたもちつつ世界中へ拡散していったと示唆される。ほかに、花粉症の原因となるスギ花粉由来のペプチドとの結合が明らかになったDP5分子のPBRでのアミノ酸置換とペプチド結合能の進化についての共同研究を行った。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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