研究概要 |
わが国においては難治性造血器腫瘍に対して非血縁骨髄移植が年間1200例以上、非血縁さい帯移植が約1000例実施されているが、その治癒率は約50%に留まっている。その主な要因は同種移植免疫反応に伴う移植片対宿主病(GVHD)で患者とドナーの組織適合性抗原、特にHLAが関与している。また、HLAの違いにより移植後の白血病の再発が抑制される移植片対白血病反応(GVL)の存在が明らかにされ、さらにHLAハプロタイプそのものがGVHDの発症に関与しているなどの臨床的な知見が集積されつつあるが、その本態を明らかにするためには高度な遺伝免疫学的なアプローチが不可欠である。本研究では、GVHDとGVLの差を決定するHLA遺伝子ならびにHLAと連鎖不平衡にある非HLA遺伝子を明らかにすることを目的にしてH22年度は以下の研究を実施した。日本人におけるHLA領域の保存性の解析:非血縁造血幹細胞移植ドナーと患者の全ゲノム関連解析(GWAS)により得られた、HLA領域(6番染色体短腕のテロメア側から25-34Mbの範囲)の約1500のSNPアリルとHLA型を用いて、HLA領域の保存性をhomozygousなHLAハプロタイプ(HP)を有する個人のSNPコンセンサスシークエンスをベースにして日本人に頻度の高いHLA-HP 40種類の保存性を検討した。この結果、99.5%以上のSNPs均一性を保っているHPと99.5%以下の均一性の違いがあり異なったLDブロックを有するHPが存在することが明らかになり、ドナーと患者のHPの適合性を評価する基礎データが得られた。さらに、SSOP法にてHLA-A, B, C, DRB1, DQB1, DPB1の遺伝子型を非血縁者間移植100ペアーでタイピングを実施し、今後の解析の基礎資料とした。
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