今年度は当初HLAクラスIについての研究を展開する予定にしていたが、本領域の他の研究者の要請により、研究計画の一部を変更して主にクラスIIに関する研究を前倒しで実行した。 (1)HLAクラスIIの立体構造データの整理と解析 これまでにX線解析されているHLAクラスIIの立体構造を詳細に解析し、HLA自身および結合している抗原ペプチドの立体構造の特徴を解析した。その結果、実験的にまだ立体構造が決定されていないHLAクラスIIのα1とβ1鎖の立体構造はホモロジー・モデリング法で充分構築できることが可能であると判断した。また50種類余りのX線構造の比較から、抗原ペプチドの結合によって誘導適合する領域(flexible zone)を見出した。この知見は、今後構築するモデル構造の構造的特徴の検討に有用である。 (2)ホモロジー・モデリング法によるDP5のホモロジー・モデル構築 まず(1)で収集したクラスIIの結晶構造を数種類選択し、ホモロジー・モデリング法でX線構造に匹敵できる立体構造が構築できるかどうか、またどのような条件を使うべきかを検討した。この予備検討を踏まえ、既知の結晶構造の中でDP5と最もアミノ酸配列の相同性が高い構造(PDBコード:3LQZ)を選択し、ホモロジー・モデルを構築した。このモデル構造を元に、責任ペプチドであるCryJ-1がどのようにDP5に結合するかを分子力場法により推定した。 (3)ホモロジー・モデリング法によるDR53のホモロジー・モデル構築 (2)と同様に、既知結晶構造の中でDR53と最もアミノ酸配列の相同性が高い構造(PDBコード:1J8H)を選択し、ホモロジー・モデルを構築した。 (4)in silico探索用化合物データベースのアップデート 構築したHLAクラスIIタンパク質の機能制御分子を探索する為の大規模化合物データ(約500万化合物)のアップデートを行った。
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