(1)HLAクラスIIの機能制御分子のin silico探索:1-1.橋本病の治療薬開発を目指したDR53制御分子の探索:昨年度にホモロジー・モデリング法で構築したDR53の立体構造を基に、抗原ペプチド結合部位に結合する可能性の高い低分子を、主としてドッキング計算により探索した。1-2.ブタクサ花粉症の治療薬開発を目指したDQ8.1制御分子の探索:DQ8.1のX線構造(PDB ID:2NNA)を基に、抗原ペプチド結合部位に結合する可能性の高い低分子を主にドッキング計算により探索した。 (2)HLA分子が関与する医薬分子副作用発現の分子機構に関する研究:班内の共同研究者から本研究遂行に関する強い要請があり、本年は多くの時間を本研究に充てた。本年度は血小板凝集抑制剤であるチクロピジン、抗てんかん薬であるカルバマゼピン、および抗HIV薬であるネビラピンとそれらの副作用と高い相関を持つと報告されているHLA分子との相互作用様式および強さをドッキング計算により予測した。いずれの場合にも、報告されている主な代謝産物も解析の対象とした。 (3)HLA分子に特化したホモロジー・モデリング法の開発:立体構造が実験的に決定されていないHLA分子の立体構造をそのアミノ酸配列からホモロジー・モデリング法で半自動的に構築できるソフトウェアを開発した。立体構造既知のHLA分子を用いてその性能を評価したところ、少なくとの抗原ペプチド結合領域の立体構造についてほぼ実験的な誤差に匹敵する正確さでモデリングできることが確認された。 (4)HLA分子に結合する抗原ペプチド予測に関する研究:HLA分子の立体構造に基づき、その抗原ペプチド結合領域に結合できるペプチドを予測するアルゴリズムを作成した。既にpIC50が測定されているHLA結合性ペプチドを用いて、本アルゴリズムを検証した結果、良好な予測が行えることを確認した。
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