研究領域 | システム的統合理解に基づくがんの先端的診断、治療、予防法の開発 |
研究課題/領域番号 |
22134008
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
角田 達彦 独立行政法人理化学研究所, 統計解析・技術開発グループ, グループディレクター (10273468)
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研究分担者 |
藤本 明洋 独立行政法人理化学研究所, 情報解析研究チーム, 上級研究員 (30525853)
宮 冬樹 独立行政法人理化学研究所, 情報解析研究チーム, 研究員 (50415311)
Todd・A Johnson 独立行政法人理化学研究所, 情報解析研究チーム, リサーチアソシエイト (90392042)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肝臓がん / ゲノム / 遺伝子 / 遺伝学 / 統計数学 / 遺伝統計学 / 次世代シークエンサー / クロマチン制御遺伝子 |
研究実績の概要 |
平成24年度は,正常ゲノム上の一塩基多様性,コピー数多様性,構造の多様性,新規配列,およびがんゲノム上の点突然変異,コピー数変化,構造変化,またHBVなど外来ゲノムの挿入といった現象の検出精度をより高め,またがんのdriverとなる変化を絞り込む解析手法をより高度化した.かつそれらをスーパーコンピュータ上の解析パイプラインプログラムをより普遍的に整備することを行い,全ゲノム配列解析,エクソーム解析を,共通した基準で解析できるように基盤を構築し,公開を行っている.また,主成分分析などの統計的な多変量解析手法を用いることによって,がんゲノムDNA上の変化を次元縮約し,がんの個性を特徴化した.それによって,肝臓がんと,臨床情報から得られる飲酒やウイルス型などの環境要因との関連を導き出し,論文化した.また遺伝子内変異や,non-coding領域での変異をまとめ,統計的有意性を求める方法論を確立し,肝臓がん27症例でのがん化やがんの個性に関わるクロマチン制御遺伝子群などを見いだした.そして,トランスクリプトームに関し,同じがん細胞からのゲノムDNA,RNAを同時に取得し,RNA-Seqのデータ解析を行えるようにし,トランスオミックスの解析への橋渡しに着手した.また正常細胞側の多様性と発現との関連に関しても,細胞株などを用いて発現に関わる多様性(eQTSNV)を網羅的にデータベース化した.以上の解析方法を確立するとともに,連携研究者との国際がんゲノムコンソーシアムとしてのデータ取得,それに付随したトランスクリプトームデータの取得,また各研究班からのデータを共通に解析することによる連携を行ってきた.特に小川班や宮野班,柴田班と連携を進め,成果をあげるに至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システム構築は順調でかつ,27症例の肝臓がんの全ゲノムシークエンスの成果発表を行ったこと,さらなる多くのがん症例に適用しつつあること,エクソームシークエンス解析の基盤も構築できたこと,またRNA-seqのデータの統合にも着手し始めたことなど,計画通りである.
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今後の研究の推進方策 |
これまで構築してきた高精度ながんゲノムシークエンス解析パイプラインを,国際がんゲノムコンソーシアムの一環として得られる数百例の全ゲノムシークエンスデータに適用し解析を行い,全症例の全ゲノム上の変異を網羅的にカタログ化し,統合的解析を行う.またオミックス情報とシステム的アプローチによって,ドライバー変異・遺伝子の同定,パスウエイ内の蓄積やネットワーク構造の解明を行う新たな方法を開発する.そしてオミックス情報によるがんのサブタイプと表現型との関係を解析し個別化医療の基盤とする.多症例のがんゲノムシークエンスの網羅的解析,ネットワーク構造解析,統計的因果推論を行うため,新たに東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピュータを用いる.これらを連携によって行う.そして大規模臨床検体コホートでの臨床病理学的データとの関連解析を同時に行うことにより,多型情報による発癌の遺伝的背景の探索を行い,個別化診断バイオマーカーや治療標的分子を検出,個人ゲノムの多様性や臨床情報ががん発症に影響するメカニズムを解析する.そして知見をデータベース化し,システムとして解釈・予測する方法を確立,がんのサブタイプの特定を行い,薬への応答性などの表現型の予測を行う方法を提案,実装し,システム化する.これらにより,転移の予防,薬剤応答の予測や薬剤耐性獲得の予防,抗がん剤の新規ターゲットの発見・血液診断法の開発,を行うことを目指す.そして次世代のがん医療の産業化とし,個人ごとのクリニカルシークエンスによる薬物の有効性や副作用の予測などの個別化医療への基盤を確立する.生物情報学分野の研究者の育成に関しては,学際的な研究室間受け入れ体制や研究会など交流の場を設ける.
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