研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22135002
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
佐藤 いまり 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 准教授 (50413927)
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研究分担者 |
佐藤 洋一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70302627)
岡部 孝弘 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (00396904)
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キーワード | 質感解析 / 分光解析 / 形状推定 / 任意照明下での画像合成 / 反射解析 / 視覚情報工学 / コンピュータグラフィックス |
研究概要 |
平成23年度は,画像のみ(または照明変動下で観察される画像列)から物体形状および質感を獲得する手法を開発する技術について取り組んだ.特に,精度の高い測色ならびに表色を目的として,実在シーンの光学特性をモデル化し,任意光源環境下で精度高く正見えの再現を行う技術を開発した.具体的には,複雑な光学特性を持ち解析が難しいとされてきた,実在物体の持つ蛍光特性のモデル化に取り組み,照明色変化にともない観察された色変化に基づき対象物体の蛍光成分と反射成分を分離する手法を提案した.さらに,実在物体の持つ蛍光成分を反射成分と分離して計測する技術の開発を進め,照明方向の変化にともない観察された蛍光発光の強度変化に基づき対象物体の形状を推定する技術の開発を進めた.今後,蛍光発光と質感認知の関係について解明へと進めていく. また,どのような画像を心地よいと感じるのか,写真の主観的な品質識別を目的とし,その性能向上に寄与する色彩調和の評価手法についても検討した.従来の色彩調和モデルは,単純な配色を刺激とする心理実験に基づき構築されている.そのため,従来モデルでは様々な色が様々な形で同時に表れる写真の色彩調和を適切に評価することができなかった.この問題を解決するためには,従来モデルで取り扱っていた単純配色と写真の配色との間に存在するギャップを埋める必要がある.そこで,写真の色彩調和はその写真中の局所領域の組合せで評価できると仮定し,その主観的品質が高いか低いかの識別手法の設計を行った.主観的品質が与えられた大規模データベースを用いた実験により識別性能が向上することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実在物体の観察に基づき形状や反射特性(艶や色)をモデル化する技術の開発が順調に進んできている.特に,複雑な光学特性を持ち解析が難しいとされてきた実在物体の持つ蛍光特性のモデル化に取り組み,蛍光成分と反射成分の分離手法を提案し,コンピュータビジョン分野のトップの会議にて学生優秀論文賞(Best Student Paper Honorable Mention Award)を授与されるなど,高い評価を得ている.また,写真に対するユーザ評価に基づき,人間が好ましいと感じる品質を画像特徴量を通して解析する手法の開発にも取り組み成果を挙げることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,実在シーンの物理的なパラメタ(形状・材質・光源)と質感認知との関係についての解析を進め,質感知覚に有効な画像生成・加工技術の開発へとつなげる予定である.
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