研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22135002
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
佐藤 いまり 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 准教授 (50413927)
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研究分担者 |
佐藤 洋一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70302627)
岡部 孝弘 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (00396904) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 質感解析 / 分光解析 / 形状推定 / 任意照明下での画像合成 / 反射解析 / 視覚情報工学 / コンピュータグラフィックス |
研究実績の概要 |
平成24年度は,これまで複雑な光学特性を持ち解析が難しいとされてきた,実在物体の持つ蛍光特性に基づくインバースレンダリング手法の開発に取り組み,従来の反射のみを考慮した手法の限界を克服して実世界のモデル化を実現する技術を開発した.具体的には,入射光とは異なる波長で観察するBispectral Measurementの利用により実在物体の持つ蛍光成分を反射成分と分離して観察する技術を提案し,照明方向の変化にともない観察された蛍光発光の強度変化に基づき頑健に形状推定を実現する技術を開発した.蛍光に基づく手法は,物体表面の艶や相互反射の影響を受けずに安定に形状推定が実現できるという利点を持つ.従来の反射に基づく形状推定における問題を蛍光に着目する事で容易に回避できることを示した.また,物体表面において反射により観察される色は光源色の影響を受け,蛍光は照明色の影響を受けずに一定という特性に着目し,画像を撮像するカメラの分光感度と照明の分光分布の同時推定を実現する新しいカラーチャートを提案した.対象シーンをこのカラーチャートともに撮像する事により,未知の照明条件,未知の特性を持つカメラにより撮影された画像を入力として,対象シーンの色,光源色,カメラの特性を同時に推定することができることを示した.これにより,対象シーンの照明色が変わった場合,あるいは異なるカメラで観察された場合の画像を合成することができる.1枚の画像からの対象シーンの色,光源色,カメラの特性の同時推定はこれまで実現されていない画期的な技術である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実世界のモデル(実在物体の形状や反射特性,シーンの照明環境)を獲得し画像合成に用いる技術の開発が順調に進んできている.特に,前年度までの実在物体の持つ蛍光解析を通して明らかにした蛍光発光の特徴を利用し,実在物体が示す蛍光発光に基づき物体表面の艶や凹形状に起因する相互反射を回避して,安定に物体形状を推定する独創的な手法を提案する事ができた.また,画像を撮像するカメラの分光感度と照明の分光分布の同時推定を1枚の画像から実現する手法を世界に先駆けて実現することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまで研究をすすめてきた実在物体の反射特性及び蛍光特性のモデル化技術を発展させ,任意照明下での物体の見え方を合成する手法を実現する予定である.さらに,B班の協力のもと,実在物体の材質とユーザによる実世界理解の関係についての解析を進めて行く.
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