研究概要 |
5年間の本研究課題の初年度となる平成22年度は,質感を人が認知する際に用いる表示デバイスの開発,また実物体の質感をありのままに取り込むための装置および画像処理方法に関する研究を実施した.表示デバイスについては,反射率可変型表示デバイス(電子ペーパ)をさらに複数のプロジェクタで照明することにより,それぞれ単体のデバイスでは不可能な高いダイナミックレンジを有する高精細ディスプレイの開発を行い,特に複数のプロジェクタ像の重ねあわせについて研究を行った.また実物体の質感の解析については,多様な照明条件下で撮影した実画像の解析により,拡散反射(物体の地の色)と鏡面反射(表面のつや)の2成分に分離する方法を開発し,これにより実写画像からつやの強さを変化させた画像を生成することが出来るようになった.また一方で,立体物を複数のプロジェクタで照明することにより,立体物表面にハイダイナミックレンジ表示を施す方法について開発を行った.一方で,画像解析に関する研究については,形状既知の物体を2種類の照明条件下で撮影した画像から,物体全体の反射率分布と光源方向を同時推定する手法を高精度化した.さらに,光がにじみやすい半透明物体の形状にパターン光を照射することで,光の滲み(表面下散乱)や物体表面の微細構造による複数反射(相互反射)による影響を除去し,高精度に計測する手法についても研究を進め発表を行った.
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