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2012 年度 実績報告書

質感認知に関わる記録・合成と表示

計画研究

研究領域質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究
研究課題/領域番号 22135003
研究機関広島市立大学

研究代表者

日浦 慎作  広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40314405)

研究分担者 岩井 大輔  大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (90504837)
研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2015-03-31
キーワード質感 / HDR / 反射解析 / BTF
研究実績の概要

本研究課題では今年度,能動照明を用いた質感の計測および提示に関して研究を行った.
能動照明を利用した質感の計測については,任意の固定照明条件下で鏡面反射成分を除去し,拡散反射成分のみを含む画像を生成する手法を新たに開発した.対象物体上の各点において鏡面反射成分は観測方位に依存して変化するため,様々な方位からの観測輝度値の最小値を求めることで拡散反射成分を抽出することが出来る.しかし実際には対象物体上の各点の対応関係を求めることが容易でないため,プロジェクタからグレイコードパターンを投影し,それぞれの入力画像をプロジェクタの投影中心から観測した時に得られるであろう「プロジェクタ視点画像」に変換する.この画像は幾何学的な視点がプロジェクタの投影中心にあり,測光学的な視点が実カメラ位置にあるような特殊な画像である.これらの画像から画素ごとに最小値を求めることで,拡散反射成分を求めることが出来る.その他,BTF画像の各画素から求めた統計値に対しグラフカット法を適用することで,テクスチャ合成を行う手法を開発した.
質感の提示については,テクスチャを有する物体上へ映像をプロジェクタ投影する際の投影像の色補正に関する研究を行った.プロジェクタから投影された画素は無限小の点ではなく,対象上のある拡がりをもった領域を照らす.この画素サイズよりも細かな単位での色補正は不可能であるため,投影画素領域内で対象面の反射特性が空間的に均一でない場合,色補正の精度が低下してしまう.そこで高解像度カメラを用いてこの問題を解決した.投影1画素内の投影反射色を高密度に計測し,プロジェクタに入力する画素値と投影表示される反射色との関係を得ることで,表示したい目標画像との差を最小化する投影像を算出する.従来手法と比較して,反射特性の変化が急峻な領域での色補正精度の悪化を最大で27.7%抑えられることを確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

この研究課題では当初より,単なる画像の入力に基づく質感の解析でなく,能動照明を用いることでより詳細かつ正確に質感を構成する各光学的要素を分離,解析することを目的としており,その観点で多くの解析手法を順調に開発することができている.これまでに,高空間周波数照明を用いた鏡面反射と拡散反射の分離,パターン照明を用いた表面下散乱・相互反射の抑制,線形化に基づく反射現象の分類などの成果を収めているが,それに加え今年度は,より一般的な照明条件下における鏡面反射の除去にパターン光の投影を用いる方法を提案し,良好に鏡面反射の除去ができることを確認した.
また一方,質感の提示については,プロジェクタの画素の大きさに起因するアーティファクトの抑制を目的に,高解像度カメラを用いた投影光の補正方法を提案した.従来はプロジェクタ投影光と対象のテクスチャとの間に線形な関係を仮定していたが,実際には微細なテクスチャによる視覚的な不自然さが感じられることがあり,これを高解像度カメラによる観測を通して補正できることが確認でき,より高精細で正確なテクスチャを実物体上に投影表示するための基礎が確立されたとかんがえられる.

今後の研究の推進方策

今後の推進方策として,研究組織の充実を図ることを予定している.具体的には連携研究者として,宮崎大輔(広島市立大学 准教授)および吉元俊輔(大阪大学 助教)を加える.宮崎大輔は特に高度画像計測,具体的にはマルチスペクトル画像および偏光画像を用いた画像の解析の専門家であり,偏光に基づく微細形状の計測,およびマルチスペクトル画像を用いたメタメリズムの生起などの研究を通して物体の見えに関する質感に関する研究を行う.一方で吉元俊輔は電気刺激パターンやダイラタント流体を用いた触覚・力触覚の提示など,触覚提示に関する様々な新方式について研究を行なっており,触質感の提示に関する研究を進めていくことを予定している.これらの研究者が互いに交流することで,より総合的な質感の計測および提示技術の研究が推進される体制を組んでいく予定である.

  • 研究成果

    (25件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (21件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 複数台プロジェクタによる投影型複合現実感のための解像度を考慮したプロジェクタ最適配置2012

    • 著者名/発表者名
      島津冴子
    • 雑誌名

      日本バーチャルリアリティ学会論文誌

      巻: Volume 17, Number 3 ページ: 261-268

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 投影型アノテーションにおける投影面形状の重畳文字可読性に与える影響および重畳文字の運動による可読性改善に関する研究2012

    • 著者名/発表者名
      岩井大輔
    • 雑誌名

      日本バーチャルリアリティ学会論文誌

      巻: Volume 17, Number 4 ページ: 469-476

    • 査読あり
  • [学会発表] フォトクロミズムを利用した没入型ディスプレイ投影面の相互反射補償および高コントラスト化2013

    • 著者名/発表者名
      竹田翔一
    • 学会等名
      電子情報通信学会総合大会
    • 発表場所
      岐阜大学 (岐阜県)
    • 年月日
      2013-03-22
  • [学会発表] 6スペクトルバンドプロジェクタによる投影色補正2013

    • 著者名/発表者名
      武内真梨奈
    • 学会等名
      電子情報通信学会総合大会
    • 発表場所
      岐阜大学 (岐阜県)
    • 年月日
      2013-03-22
  • [学会発表] Projection-based Mixed Reality on Viscoelastic Surface by Visual Tracking of Surface Deformation2012

    • 著者名/発表者名
      Punpongsanon P
    • 学会等名
      計測自動制御学会パターン計測シンポジウム
    • 発表場所
      春日居びゅーほてる (山梨県)
    • 年月日
      2012-12-14
  • [学会発表] A First Introduction to Metamerism Art2012

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki D
    • 学会等名
      SIGGRAPH ASIA 2012 Posters
    • 発表場所
      Singapore (シンガポール)
    • 年月日
      2012-11-28
  • [学会発表] 視温覚融合投影提示における視覚刺激の温覚への影響に関する考察2012

    • 著者名/発表者名
      岩井大輔
    • 学会等名
      日本バーチャルリアリティ学会力触覚の提示と計算研究会
    • 発表場所
      大阪大学 (大阪府)
    • 年月日
      2012-11-15
  • [学会発表] Polarization-based surface normal estimation of black specular objects from multiple viewpoints2012

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki D
    • 学会等名
      3DIMPVT2012
    • 発表場所
      Zurich(スイス)
    • 年月日
      2012-10-13
  • [学会発表] 投影面反射特性の不連続境界における高解像度カメラを用いた高精度色補正2012

    • 著者名/発表者名
      三原翔一郎
    • 学会等名
      映像情報メディア学会年次大会
    • 発表場所
      広島市立大学 (広島県)
    • 年月日
      2012-08-31
  • [学会発表] 投影重畳領域でのコンテンツの投影結果推定による画質劣化を最小化するプロジェクタ選択手法2012

    • 著者名/発表者名
      田中章文
    • 学会等名
      映像情報メディア学会年次大会
    • 発表場所
      広島市立大学 (広島県)
    • 年月日
      2012-08-31
  • [学会発表] 多重散乱光を考慮した生成画像による関与媒質の散乱特性の推定2012

    • 著者名/発表者名
      石丸功一
    • 学会等名
      映像情報メディア学会年次大会
    • 発表場所
      広島市立大学(広島県)
    • 年月日
      2012-08-30
  • [学会発表] 「質感脳情報学」プロジェクトにおける視覚的質感の記録・解析・再現に関する取り組み2012

    • 著者名/発表者名
      日浦慎作
    • 学会等名
      映像情報メディア学会年次大会
    • 発表場所
      広島市立大学(広島県)
    • 年月日
      2012-08-29
    • 招待講演
  • [学会発表] 画素形状のランダム符号化とスパース正則化に基づく超解像2012

    • 著者名/発表者名
      日浦慎作
    • 学会等名
      MIRU2012 画像の認識・理解シンポジウム
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      2012-08-06
  • [学会発表] 画像の線形化に基づく任意光源方位HDR画像列の可逆圧縮2012

    • 著者名/発表者名
      武田涼平
    • 学会等名
      MIRU2012 画像の認識・理解シンポジウム
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      2012-08-06
  • [学会発表] 光源方位未知条件下での照度差ステレオ法を用いた三次元形状の高精細化2012

    • 著者名/発表者名
      上川智幸
    • 学会等名
      MIRU2012 画像の認識・理解シンポジウム
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      2012-08-06
  • [学会発表] 幾何学的統計量に基づく3次元形状鮮鋭化フィルタの最適化2012

    • 著者名/発表者名
      横溝将成
    • 学会等名
      MIRU2012 画像の認識・理解シンポジウム
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      2012-08-06
  • [学会発表] 符号化撮像による画像解析の高性能化2012

    • 著者名/発表者名
      日浦慎作
    • 学会等名
      視覚情報基礎研究会
    • 発表場所
      東京塗料会館(東京都)
    • 年月日
      2012-06-23
    • 招待講演
  • [学会発表] 簡易多層モデルを用いたメタリック塗装の再現2012

    • 著者名/発表者名
      中原なつみ
    • 学会等名
      Visual Computing / グラフィクスと CAD 合同シンポジウム
    • 発表場所
      早稲田国際会議場(東京都)
    • 年月日
      2012-06-23
  • [学会発表] Dynamic Reflectance Control of Photochromic Compounds for 3D High Dynamic Range Display2012

    • 著者名/発表者名
      Hino N
    • 学会等名
      IEEE International Workshop on Computational Cameras and Displays
    • 発表場所
      IEEE International Workshop on Computational Cameras and Displays
    • 年月日
      2012-06-21
  • [学会発表] Focal Length Modulation of Projection Lens for Defocus Blur Compenstation2012

    • 著者名/発表者名
      Samuel D
    • 学会等名
      IEEE International Workshop on Computational Cameras and Displays
    • 発表場所
      IEEE International Workshop on Computational Cameras and Displays
    • 年月日
      2012-06-21
  • [学会発表] コンテンツの空間周波数成分を考慮した投影画質劣化を最小化するプロジェクタ選択手法2012

    • 著者名/発表者名
      田中章文
    • 学会等名
      システム制御情報学会研究発表講演会
    • 発表場所
      京都テルサ (京都府)
    • 年月日
      2012-05-23
  • [学会発表] 投影対象面の反射特性の空間的不連続領域での高解像度カメラを用いた高精度色補正投影2012

    • 著者名/発表者名
      三原翔一郎
    • 学会等名
      システム制御情報学会研究発表講演会
    • 発表場所
      京都テルサ (京都府)
    • 年月日
      2012-05-22
  • [学会発表] 視温覚融合投影インターフェースにおける視覚情報付加による温度感覚への影響に関する考察2012

    • 著者名/発表者名
      吉川佑生
    • 学会等名
      システム制御情報学会研究発表講演会
    • 発表場所
      京都テルサ (京都府)
    • 年月日
      2012-05-21
  • [備考] 研究発表リスト(日浦)

    • URL

      http://www.ime.info.hiroshima-cu.ac.jp/~hiura/profile.html#work

  • [備考] 岩井大輔HP

    • URL

      http://www-sens.sys.es.osaka-u.ac.jp/users/iwai/jp/

URL: 

公開日: 2018-02-02  

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