研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22135003
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
日浦 慎作 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40314405)
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研究分担者 |
岩井 大輔 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90504837)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 質感 / 陰影 / 反射解析 / 粘弾性変形 / メタメリズム / 照度差ステレオ法 |
研究概要 |
今年度は,レンジファインダ等の既存の形状計測装置に照度差ステレオ法を組み合わせ,大まかな形状情報と陰影情報から高精細かつ歪のない形状情報を計測する手法を開発した.この手法では照明の方位をあらかじめ与える必要がないこと,および鏡面反射や影の影響を受けにくいことが特徴である.実験において,レンジファインダでは計測ができなかった微細な凹凸を鮮明かつ高精細に計測することが可能であることが示された.また,我々はメタメリズムと呼ばれる現象を利用し,照明XではA/BとC/Dのそれぞれが同一の色に,また照明YではA/CとB/Dのそれぞれが同一の色に見えるような4種類の塗料を作るための顔料の混合比率を自動計算する手法を計算した.これにより照明XとYでそれぞれ陰影の方向が変化したような知覚を与えることができ,平面でありながら凹凸を有する物体のように見せる手法の基礎を構築することが出来た. 今年度はさらに,視覚と触覚の融合的な提示手法の基礎的研究として,柔軟物体を力により変形させた場合の変形量や操作力を求める手法について研究した.1つは柔軟物体の粘弾性変形の画像計測法で,近赤外領域でのみ観測可能な特殊な顔料を,画像処理用のマーカーとして対象表面に塗布して(もしくは、埋め込んで)用いた。実験の結果、ユーザの変形操作に応じて、変形の様子が重畳投影により可視化できることを確認した.もう1つは柔軟物体への操作力を推定する手法で,カメラ画像からオプティカルフロー法により取得した変形箇所周囲の空間変位分布を入力とし,等方性を仮定した座標変換と空間平均によりユーザが対象物に加えた押し込み,伸張,捻りの力ベクトルおよびトルクのリアルタイム計測を実現した.この研究の場合,変形対象にマーカを埋め込む必要がないため,例えば人の皮膚(掌)を対象とし,皮膚に指で変位を加える際の力学的情報を計測することが出来る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究課題では当初より,単なる画像の入力に基づく質感の解析や,ディスプレイによる質感の提示だけでなく,能動照明を用いることでより詳細かつ正確に質感を構成する各光学的要素を分離,解析したり,質感を提示する手法を開発することを目的としている.この点については今年度,照明条件の変化により微細形状を計測する手法や,逆に微細形状を知覚させることが出来るような陰影変化を生成する手法など,新規性と有用性の高い手法を開発することができており,順調に研究が進展しているといえる.また今年度よりさらに,視覚と力覚,触覚の融合のために,柔軟物体の変形を計測する手法や,変形から物体に及ぼした力の大きさや向きを推定する手法も開発しており,全体として大きな成果を収めることが出来た.特に,今年度より連携研究者に加わった宮崎大輔(広島市立大学 准教授)および吉元俊輔(大阪大学 助教)もこれらの成果に大きく寄与した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き,研究代表者(日浦),分担者(岩井)に加え,連携研究者の宮崎・吉元が研究を継続することになっており,形状計測,反射解析,メタメリズム応用,柔軟物体の計測および高度光制御による情報提示などの研究を推進することになっている.最終年度にあたるため,これらのシステムを融合し,様々な質感を計測・解析・提示するシステムの構築と評価を進める予定である.
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