研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22135004
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
研究代表者 |
西田 眞也 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 人間情報研究部, 主幹研究員 (20396162)
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研究分担者 |
内川 惠二 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00158776)
本吉 勇 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 人間情報研究部, 主任研究員 (60447034)
藤崎 和香 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (20509509)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 質感 / 光沢感 / 色覚 / カラーディスプレイ / 透明感 / 画像統計量 / マルチモーダル / 触覚 |
研究実績の概要 |
【視覚:光沢感】光沢の知覚が網膜偏心度の増加とともに急激に難しくなること、この特性は高次形態処理の特性と符合することを明らかにした。【視覚:液体粘性】液体の粘性の知覚が運動ベクトル場情報だけでも可能であること、また、局所的な運動速度と運動ベクトルの空間的な滑らかさが、それぞれ粘性と液体性の重要な手がかりとなっていることを発見した。また、運動空間比較メカニズムの特性を解明した。【触覚:振動周波数】手触りの違いは振動の周波数の違いによって生み出さる。異なる機械受容器によって構成されるチャンネルにより振動周波数情報がどのように符号化されているのかを分析し、チャンネル内情報とチャンネル間情報の両方が利用されていることを明らかにした。 【視覚:色知覚と金属感】 金銀銅色知覚、光沢知覚、および金属表面知覚との相互関係について心理物理実験を行い、明度に対する金銀銅色知覚の特徴を明らかにした。 【新カラーディスプレイ開発】前年度に開発した2次元タイプのハイパースペクトルディスプレイを使って自然、不自然な照明下の自然画像を提示し、人が照明光を判別できるかを検討する目的で心理物理実験を行った。開発したディスプレイはスペクトル分布を忠実に再現できるため、どのような照明下の対象も色域の制限を受けずに表示できることが分かった。 【視覚:一般物体残効】リアルな物体の画像に順応するとその後に現れる物体の光沢感や透明感のみならず歪み・凹凸・ざらつきなど三次元形状の知覚も大きく変化するという一般物体残効を利用して、物体カテゴリの認識にも低次の画像特徴が利用されていることを示した。 【視聴覚:素材感】複数の素材を棒で叩くCG動画に、複数の素材を実際に叩いた音刺激を組み合わせ、マルチモーダルな質感知覚がどのように変化するかを検討し、映像情報と音情報の双方に基づいた相補的なマルチモーダル材質知覚の原理を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のように、光沢感知覚の特性の解明、液体知覚の運動情報の特定、触覚符号化機構の分析、新しい物体認識のパラダイムの提案など、様々なサブプロジェクトが堅調に進展している。新カラーディスプレイについては、ディスプレイの改良のみならず、これを用いて心理物理実験を行った。マルチモーダルな質感知覚については、材質知覚における視聴覚統合の原理を見いだしたほか、視・聴・触覚による木の質感知覚についての研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
【視覚・光沢】表面上の明るい領域がハイライトとして知覚される形状条件や提示条件を分析し、光沢知覚の処理アルゴリズムを推定する。【視覚:運動からの質感知覚】液体粘性知覚の研究を継続するとともに、炎などの気体や生物らしさを運動情報から知覚する仕組みの分析を進める。【触覚】温度感覚が色などの視覚情報にどのような影響を受けるのか、また、その関係が学習によって変化する のかを検討する。また、触り心地を生み出す振動情報の符号化の特性の分析を進める。 【新カラーディスプレイ】これまでの表示方式については、画素数と階調をさらに増やしながら、全く新しい方式の検討も行い、ハイパースペクトルで高画素表示可能なディスプレイの可能性を検討する。さらに、心理物理実験の刺激提示や美術作品の表示のために、表示面の工夫などで画質の向上を図る。 【視覚:質感形状相互作用】一般物体残効錯視の分析を通して三次元物体の知覚を支える機能的脳内表現を明らかにする。 【多感覚:素材感】材質知覚における視聴覚の相互作用を定量的に分析し、聴覚情報による視覚的特徴の知覚変容、またはその逆が生じるかとどうかを検討する。また、fMRIを用いて、心理実験で明らかになった視聴覚統合に基づく素材認識の神経メカニズムの同定を試みる。
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